地元住民が「世界で一番バカな祭り」と称するスペインの『トマト祭り』に参加してみた! 体中がめちゃめちゃトマト臭くなったゾ!!

地元住民が「世界で一番バカな祭り」と称するスペインの『トマト祭り』に参加してみた! 体中がめちゃめちゃトマト臭くなったゾ!!

皆さんはスペインのとある小さな街で開催されている、「トマト祭り」(トマティーナ)をご存知でしょうか? 地元住民と観光客が一緒になって、ひたすらトマトを投げ合うお祭りです。もしかしたら、テレビで見たことがあるという人もいるかもしれません。記者(私)もその程度の知識を持たず、お祭りに参加しました。

そうしたところ、テレビではわからないようなお祭りの真実を知ることができたのです。地元住民は「世界一バカな祭り」と称しており、終了後には街中はめちゃめちゃトマト臭くなるんです。街だけでなく、自分も超臭い! 死ぬほど臭い!! トマト嫌いな人は発狂してしまうかもッ! それぐらいトマト臭が体に染み付きます。クサッ!
 
毎年トマト祭りが行われているのは、バレンシアから西に約30キロのところにある「ブニョール」という村です。人口はわずか1万人、ここに毎年お祭り目当てに4万人もの人が訪れます。

街をあげてのお祭りなんですが、トマト投げの舞台となる場所は、街の一角です。したがって、実際に祭りに参加してトマトまみれになる人はごく一部。多くはその様子を見ているといったところでしょうか。

お祭り前夜には大通りに屋台が立ち並び、移動遊園地なども繰り出して大賑わいになります。祭りの本題はトマトを投げるはずなのに、むしろ前夜祭の方が盛り上がってるのでは? と思わざるを得ません。どうやらここの人々はお酒が大好きなようで、翌日の死闘を忘れたかのようにお酒を飲み続けるのです。私も地元の人と一緒に飲んでいたら、知らないうちに酔いつぶれて夜が明けていました。

さて、ここからトマト祭りのお話をしたいところなのですが、ブニョールの皆さんは非常にゆったりしています。祭りは時間を気にせずに進行していたため、今しばらく前置きにお付き合いください。トマト投げ開始の合図は、「ハム取り」という別の催しがきっかけになります。これは木の棒のてっぺんに豚の足をまるまる使ったハムを置き、これを誰かが手に入れれば、トマト投げ開始となるわけです。

ところがこれがなかなか取れない。なぜなら木には石けんが塗ってあるからです。しがみついて上ろうとしても、つるつると滑り全然上昇しません。もっと簡単なルールにすれば良かったのに、なぜわざわざ時間のかかるものを選んじゃったんでしょうね。でも、うまくいかないから盛り上がるわけです。とはいっても、あまりにも取れなさすぎて、応援している方もちょっと飽きてきちゃうんですが(笑)。

そのうちに近隣住民からの放水が始まります。参加者がギューギュー詰めの場所に向かって、ホースで放水するのです。これが何を意味しているのかはわかりませんが、とにかく盛り上がってきた雰囲気。でも、なかなか開始とはならないんです。ハム取りが終わった後、1時間経ってもトマト投げがスタートせず、参加者(特に欧米人)はぐったりし始めました。

もはや疲れきった頃に、突然空砲が街に鳴り響きトマト祭りスタートです。二日酔いのうえに、長時間待たされて疲弊したはずの参加者のボルテージはいきなりマックスになって「ウォーッ!!」という歓声が湧き上がりました。そしてどこからともなくトマト満載のトラックがやってきました。すると、待たされ人々は感極まって誰かれ構わずハイタッチ! 「俺達はすでに戦友だ。ともに長い待ち時間を耐え忍んだ仲間だ」、そんな感じで「イエーイ!」です。まだ祭り始まってないんだけど……。

1台目のトラックからおびただしい数のトマトが放出されます。トラックの荷台にいる人は、投げているつもりなのでしょうが、あまりのトマトの多さにダダ漏れな感じでトマトを放出していきます。参加者はこぼれ落ちたトマトをつかむと、周りもよく見ずに投げ始めました。「さっきハイタッチしたじゃねえかッ! 仲間じゃなかったのかよッ!」、そう言いたい気持ちをグッと堪えて、私も「ヨイショーッ!」とトマト投げ。一応ルールとしては、ケガをしないようにトマトを潰してから投げるのです。とはいえ、柔らかくでも当たり方によってはちょっと痛いよ。

約1時間の間、トマトを投げ続け浴び続け、足元にはトマトの「水溜り」、いや「トマト汁溜まり」ができてしまいました。勝者も敗者もなく誰もがトマト人間です。終了をしらせる空砲が鳴ると、みんなで再びハイタッチ。今度こそ本当の友情を実感した瞬間です。さっきのハイタッチがウソのよう……。

いや~、いい汗かいた~。と思いきや、超臭い! めっちゃトマト臭い。青臭いトマト汁とトマトの果肉が体中にまとわりついています。開始前と同じように街の人が放水してくれるんですけど、そんな生易しい水ではまったく匂いが落ちません。宿に戻って三回シャワーを浴びたのですが、爪や耳、鼻に詰まっていたトマトのカスが取れるだけで匂いは取れない。

うわ~、これがトマト祭りの真実か~。テレビ見てても匂いまでは伝わってこなかったわ~。とはいえ、街の人々ならびに参加者の誰もがご機嫌で非常に楽しい経験になりました。何より無邪気にはしゃげるのは最高です。そういう意味では、「世界一バカな祭り」とは地元の人にとっての褒め言葉かもしれませんね。バカになりたい人は、ぜひ参加してみてください。ただし超臭くなりますよ。覚悟してくださいね。

取材、写真:Photographer Koach
執筆:フードクイーン・佐藤


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