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地方民が飛行機を利用するハードルは高い。航空会社、便数、行き先、どれをとっても都会より圧倒的に選択肢が少ないのである。もちろん運賃も割高……でも、文句なんてあるものか。地方民は皆「運航してくれるだけでありがたい」と理解しているのだから。
ただ、彼らにも密かに傷ついていることがある。それは空港を利用する際、地方便の搭乗口は手荷物検査場からかなり遠い場合が多いこと。そりゃあ利用者が少ないのだから当然と理解しつつも、毎回「どうせ……」とイジケた気持ちになるんだよね。
しかし! そんな地方便利用者にも、ごく稀に「逆に地方民でよかった」と感じる “ラッキーフライト” が存在していることをご存知だろうか?
・羽田空港の離島
それは羽田空港第2ターミナル内にある『サテライト』と呼ばれるエリアを発着する便のこと。羽田空港は利用する航空会社によってターミナルが分かれているのはご存知の通りだ。現在第2ターミナルを発着するのは主にANA、エアドゥ、ソラシドエア、スターフライヤー。
実はサテライトの正体とは “第46、47、48搭乗口” である。なぜこの3つが他の搭乗口と違うのかといえば、バスに乗らなくては行けない離れた場所に位置しているから。いわば羽田空港内の離島ともいうべきそのエリアを『サテライト』と呼ぶワケだ。
サテライト行きのバスに乗るには、該当の搭乗口から出発する便のチケットを提示する必要がある。私は年間5回ほど羽田からANAを利用するのだが、サテライトに当たったのは過去2回きり。どちらも実家がある鳥取行きの便である。
他にも私が知る限り、サテライトを出発する便の行き先は地方ばかりという印象だ。直近の利用時は鳥取、秋田、佐賀の三つ巴だったっけな……。
さぁ、それではなぜ、わざわざバスに乗らねばならないサテライト発便が「ラッキーフライト」であるかをご説明しよう。搭乗口は事前にアプリ等で確認できるので、サテライト発と分かれば私は早めに空港へ向かうことにしている。バスも空いていてより快適だ。
サテライトへ到着しエスカレーターを登ると……
なんか高級ホテルのロビーみたいな感じ!
・素敵ポイント①開放的すぎる空間
そう……サテライト発の便がラッキーフライトである理由は、その「圧倒的な居心地のよさ」にあるのだ。まず、他の搭乗口周辺と比較して明らかに空間が広々としている。
連休中などはまた違うのかもしれないが、地方便がメインなためか利用者はそう多くない。
「天然ソーシャルディスタンス状態」と言ってもいいのではないだろうか。
・素敵ポイント②立派すぎる椅子たち
それから誰もが驚くのは椅子の種類と数の多さ。
まず普通の椅子に……
ビーチのように寝転べる椅子。
ほとんどベッドな椅子。
肘当てと机の付いたフカフカの1人用ソファ。
ちょっとした会議ができそうなテーブルもある。もちろんWi-Fiと電源完備!
・素敵ポイント③レアすぎる景色
さらに個人的に楽しいのは、大きな窓の外の景色を見ることだ。
リクライニングチェアーに寝そべりながらボンヤリと、働く整備士さんたちや飛行機を眺める時間は特別感に溢れている。
通常の搭乗口周辺と比べて、外の景色もなんとなくノンビリした様子でイイ。
・中の人に聞いてみた
さて今月1日からついに『Go Toトラベルキャンペーン』対象地域に東京都も追加され、また羽田空港を利用する機会も増えるだろう。これまで何となく「当たればラッキー」と思っていたサテライトだが、せっかくなら多くの人に利用してもらいたい。
そこでサテライトを管理する日本空港ビルデングの方に、サテライトについて話をきかせてもらうことにした。そもそもサテライトは第2ターミナル以外にも存在しているのだろうか?
担当さん「いえ、第1ターミナルにはございません。第3ターミナルにはサテライト施設はあるのですが、本館とつながっておりまして、第2ターミナルのような施設ではないです」
──じゃあ第2ターミナルだけの特別エリアなんですね! サテライトはどういった理由で離れた場所に作られたのですか?
担当さん「第2ターミナルの利便性・快適性・向上性のため、2018年12月10日に供用を開始しました。第2ターミナルは従来、国内線専用ターミナルでしたが、首都圏空港機能強化の一環として、今年3月より国際線も運航するようになりました。国内線として利用していたスポットの一部を国際線スポットとして利用することになったことから、サテライト施設を建設したんです」
──サテライトの搭乗待ちスペースはなぜあんなに⽴派なのでしょう?
担当さん「お客さまに『搭乗時間直前までゆったりとお過ごしいただきたい』という思いから、ラウンジのようにお過ごしいただける、バリアフリー構造の施設を建設しました」
──ちなみに……サテライト発便のチケットがなくても施設内に⽴ち⼊ることはできますかね?
担当さん「いいえ。サテライト発のチケットがないと、施設内に立ち入ることはできません」
・サテライトを「狙う」方法
ウムム! やはりチケットを所持していなければサテライトを利用できないようだ。ならば残された道はサテライト発の便を “狙いに行く” だけ。つまり “サテライトを利用するために飛行機に乗る” ということである。
「何もそこまで」と感じる方もいるかもいるかもしれないが、サテライトで過ごす時間にはそれくらいの価値があると信じている。運航スケジュールについてANAに問い合わせてみたところ、飛行機の搭乗ゲートは基本的に前日には決まっているそうだ。
よって出発前日か当日であれば、サテライト発のチケットを狙って購入できるのである。「とにかく旅がしたい」「出発日時はいつでもいい」という人はぜひトライしてみてほしい。まれに直前になって搭乗ゲートが変更されることもあるが……それもまた旅。
ちなみに私の読みどおり、サテライト発便の大部分は地方路線のようだ。ANAの方いわく「主要空港行きの便が当たる可能性もゼロではない」とのことだが、やはり施設の規模やバス移動という観点から、小型機(乗客150〜300人程度)がメインであるらしい。
・快適な空港の旅を……
新型コロナウイルスの影響で現在、航空業界は窮地に立たされている。また世界中を飛び回れる日まで、どうにか踏ん張っていただきたい……それは旅人一同の切なる願いだ。最後に日本空港ビルデングの方が、サテライトでの模範的な過ごし方を教えてくれた。
担当さん「サテライトは近くで航空機を見ることができるので、展望デッキとはまた違った迫力を味わうことができます。航空機を眺めながらソファーでお酒を飲んだり、空弁を食べたり、ゆったりとした時間を過ごすのがおすすめですね。それから椅子にコンセントもついているので、お仕事もはかどりますよ!」
羽田空港の新型コロナ感染対策については公式HPを参照いただけると幸いだ。色々な意見があることと思うが、旅のない人生は寂しいもの。個人的にはマスクに手洗い、密を避けつつ、まずは国内から……旅を再開させてゆくべきだと思う次第である。
Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.