JR赤羽駅前に、非常に珍しい「比内地鶏のラーメンを出している店」がある。もともと、煮干しの魚介エキスがたっぷりと入った濃厚ラーメンが人気の店ではあるが、比内地鶏のラーメンを求めてやってくる人も多く、閉店前に売り切れてしまうことが多々あるという。
・好き嫌いがハッキリと分かれる
そのラーメン屋の名は『伊藤』。大きな通り沿いに看板は出ているものの、入口は路地の奥にある。食券を購入し、自分でコップに水を入れて席に座る。非常に狭いので、他のお客さんに少し気を使って席に座りたい。ここのラーメンは極めて独特だ。それゆえ、好き嫌いがハッキリと分かれると思われる。
・肉そば
九十九里産の高級煮干しを大量に使用し、ダシの原液のごとく濃厚なスープが印象的なラーメン。スープはトロトロのようでいて透明感があり、麺を持ち上げると「置いていくな」と自分からスープがまとわりついてくる。
しかし箸で麺を持ち上げる前から、客は大きな衝撃を受けるだろう。とにかく、煮干しの豪快で強烈な香りが嗅覚と味覚を刺激するのだ。ここまで魚介の香りを強く出したラーメンは極めて珍しい。よって、この時点で魚介の香りが苦手な人は厳しいと感じてしまうかもしれない。スープは店主の努力と技術によって、魚介独特の雑味と臭みが取り除かれているが、あまりにも濃厚なために香りが強く出ているのだろう。
麺は長浜ラーメンのようにかため。スープを麺に浸透させることで美味しさを表現しているラーメンは多々ある。しかしこのラーメンは違った。麺を口に運ぶと、麺の美味しさではなくスープの美味しさが100%の支配率で煮干しのウマミを伝えてくる。だが麺をひとかみすると、スープ支配の時代が終わり、突如として攻めてきた麺の小麦のウマミによって、麺の支配率が50%に。
雑味のない濃厚な煮干しのスープが、かむことで弾ける麺のウマミを包みこむ。濃厚だったスープがマイルドかつ「小麦粉の味」に変化していく。そしてダメ押しにプルプルのチャーシューが強烈な肉汁を大放出。濃厚煮干しと濃厚チャーシューがここまで合うとは驚きである。ある意味、究極ともいうべき贅沢なラーメンだ。海(煮干し)、山(麺・小麦)、肉(チャーシュー)の3つをベストな状態で堪能できるのだから。
・比内鶏肉そば
肉そばのように強烈なラーメンかと思いきや、真逆といっていいほど繊細でマイルドなラーメン。比内地鶏からダシをとったスープは鶏のダシだけを残して余計な味を残していない。スープが繊細なぶん麺の味が強調される。
しかし筆者は、比内鶏肉そばの主役が、比内地鶏でも麺でもないことに気がついてしまった。このラーメンの主役はチャーシューなのである。あまりにも控えめな性格をした比内地鶏。しかしそこに秘めたる潜在能力は計り知れなく、ただでさえ美味なチャーシューを2倍にも5倍にも10倍にもしてしまうのである。
食べ方は自由だが、ある程度スープと麺を堪能してからチャーシューを食べてみてほしい。口の中が比内地鶏の繊細な味に包まれているなかに、贅沢な厚切り濃厚チャーシューが入り込んでくる。---そして幸せが訪れる。
・総評: 食べていてワクワクするラーメンである
ワイルドだけど繊細な肉そば、マイルドだけど衝撃的な比内鶏肉そば、そのどちらも食べていてワクワクするラーメンである。肉そばは食べる人を選ぶラーメンなのも確かだが、もしあなたがラーメン好きであるならば、一度は体験しておきたい味である。もし魚介が苦手であれば、比内鶏肉そばがオススメだ。
・今回ご紹介した飲食店の詳細データ
店名 伊藤
住所 東京都北区赤羽1-2-4
時間 月から土11:00~16:00 17:00~23:00 / 日祝11:00~21:00
休日 不定休
Correspondent: Kuzo
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オリジナル記事: 【東京都北区グルメ】世にも珍しい比内地鶏のラーメンを食べられる店 / チャーシューの味が際立つ
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