鉄道で栄えた北海道・長万部町。そこに、伝説といっても過言ではない幻のカツカレーが存在するのをご存じだろうか? かつて長万部には『長万部食堂』という地域住民なら知らない人がいない伝説の食堂があり、多くの地域住民や国鉄職員、そして旅人たちの腹を満たしてきた。
現在はすでに閉店しているが、『長万部食堂』の味は初代シェフの子孫たちがしっかりと守り続けており、ひ孫の娘さんらが『DELI57』というカフェを開業し、120年以上前から守られているカレーの味を堪能することができるのだ。そう、『長万部食堂』の味にはそれだけ長い歴史があるのである。
・青函連絡船の厨房で修業して得た味
ひ孫さんのお母さん、つまり初代シェフのお孫さんである女性は「私の祖母が青函連絡船の厨房で修業して得た味なんです」と語る。お孫さんでも詳細まではわからないとしながらも、祖母から聞いた話を語ってくれた。それによると、以下のような物語があったという。
・一升瓶を持って弟子入りした
ひ孫さんからみて曽祖母の女性が、青森と北海道を結ぶ青函連絡船に行き、船内の厨房で働かせてほしいと懇願。そのとき、酒が入った一升瓶を持ってお願いをしにいき、どうにか働かせてもらえることになったという。
・幻のカレールーを使用したカツカレー
青函連絡船の厨房で学んだカレーの味を長万部食堂でも提供し、あまりにも美味しいため多くの人たちが食べに訪れたという。そして、なによりも絶品なのがそのカレールーを使用したカツカレーだ。お孫さんはカツカレーについて「私が小学生のころにはすでにあったので、少なくとも40年以上前からカツカレーがあったのは確かです」と語る。※ 青函連絡船は現在から約100年前に創業したので、曽祖母はそれよりも以前から長万部食堂を開業、または飲食業に従事していたと考えるのが妥当である。
・新たな命がふきこまれたカツカレー他店では体験できないルー
さっそく『DELI57』に向かった筆者(私)。店内は非常にオシャレで、午後のひととを過ごすのにちょうどよいカフェといった感じである。つまり、『長万部食堂』のカツカレーはカフェのカツカレーとして、新たな命がふきこまれたというわけだ。
・じっくりと煮込んだ水分量の少ないカレー
かつ丼やチャーハンにも定評があるらしく、メニューを開くとあらゆる料理に誘惑されてしまった筆者。とにかく今回はカツカレーということで、予定通りカツカレーを注文。そして目の前に出されたカツカレーは、やや色が濃く、じっくりと煮込んだ水分量の少ないカレーであることがわかった。
・他店では体験できないルーにビックリ
ズ……、ズン……、ズンズン……、ズンズンズンズン…、ズンズンズンズンズンズンズンズン! なんなんだ、このジワジワと迫ってくるかのような「今まで体験したことのないような迫りくる食感は!」。極限ともいえるネットリとした強いカレールーの粘度。それはライスの粘り気よりも強く、それでいてソフトでマイペースに食材にからんでくる。いや、からむのではなくアメーバのようにライスとカツを包み込んで征服してしまうのである!
・征服して完全に支配
驚くほど粘度が強いカレールーがライスとカツを征服し、続けてどんどん自分色に染めていく。だが、支配されたライスもカツもまんざらではないようで、「好きにして」といわんばかりに身を任せてスパイスの効いた深い味へと変化していく。これはヤバイ。味が濃いわけではなく、辛いわけではなく、甘いわけでもない。そこにあるのは「任せてくれればうまくいくから黙って支配されなさい」というカレールーの意志だけだ。
・キュッと引き締まる酸味がウマミにかわる瞬間
驚くべきは、カツがほのかに秘めた「酸味」の力だ。カツ自体の食感は非常に魅惑的で、ザクジュワッとくる衣と肉汁のウマミはパーフェクトに近い。だが、カツの酸味がそれらの魅力を上回る特色として味覚神経を刺激し、マイルドなカレールーとの間に壁を作る。その壁を崩してカレールーとひとつにした瞬間、味覚が覚醒し、何かが弾ける。ーーそして幸せが訪れる。
・120年も歴史を食べに行く
カレールーは非常に粘度があり、確実にライスとカツは脇役的存在となる。だがそれが良い。それで良い。このカツカレーは、ライスでもカツでもなくカレールーを楽しむものであり、カレールーを楽しむためにライスとカツが存在すると考えて間違いない。120年の歴史、それをまた長万部に食べに行きたいと思う。
・今回ご紹介した飲食店の詳細データ
店名 DELI57
住所 北海道山越郡長万部町長万部57
時間 12:00~18:00
休日 要確認
参照元1: 長万部観光協会 公式ホームページ
参照元2: 長万部役場 公式ホームページ
Correspondent: Kuzo
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オリジナル記事: 【長万部グルメ】青函連絡船のシェフに弟子入りした曽祖母のカツカレーが絶品 / 120年前から続く長万部食堂の味『DELI57』
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