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【巨大ジオラマ】夢と浪費の王国・ディズニーランドをご案内します / デアゴスティーニ『週刊マイ・ディズニーランド 』
創刊号につられて定期購読し、未開封の号が積み上がる恐怖におびえたあげく、最終的には数十万円のおもちゃが手に入るという “デアゴスティーニ沼” については以前に記事にした。しかもこの沼「何度でも失敗を繰り返す」という恐ろしい性質をもっているのだ。
もともとジオラマやミニチュアが好きで、かつディズニーも大好きだったので『週刊マイ・ディズニーランド 』というシリーズが出たときには歓喜した。衝動的に定期購読契約してしまったのは必然だといえよう。
あれから13年……今回は家宝なのかタンスの肥やしなのかわからない、壮大なジオラマをご紹介します。
・パークをご紹介
舞台となっているのはカリフォルニア州アナハイムの「ディズニーランド・パーク」。 1955年に開園した世界初のディズニーランドで、ウォルト・ディズニーの手がもっとも入っているパークといえるだろう。
これが東京ディズニーランドのジオラマだったらもっと売れたと思うのだが、大人の事情……権利関係だろうかと邪推している。
ちなみに設置場所はタンスの中である。あまりに大きくて置く場所がなく、引き出し1段分を使って収納しているのだ。ゆえに普段は見えない。なんのために買ったんだ……という心の声にはフタをする。
時間が経ってだいぶくすんでしまったが、「Disneyland」の銘板が輝く。後ろに見えるのは「メインストリートUSA駅」だ。入園すると、お城まで一直線に見通せるのは日本のパークと同じ。
パークのシンボルとなる「眠れる森の美女の城」。シンデレラ城よりも平たいフォルムで、ピンク色が印象的。
そしてもっとも大事なアイテムといえる「パートナーズ像」。2人の固い絆が感じられるとともに、ミッキーマウスがアニメーションの世界を飛び出して、実体をもった存在だと信じさせてくれるブロンズ像だ。この像が大好きというファンも多いはず!
日本でも人気の「ジャングルクルーズ」。緑濃い密林の中に、トラや大蛇、原住民の小屋が見える。細部までとてもよくできている。
指先よりも小さいボートが浮かんでいるのがおわかりだろうか。これらの小物は接着されておらず、購入者が好きな位置に置くことができた。
日本にはないアトラクション「マッターホーン・ボブスレー」。雪山をボブスレーのように走り抜けるスリルライドだとか。ふもとには「サブマリン・ヴォヤッジ」と「ディズニーランド・モノレール」も見える。
この『週刊マイ・ディズニーランド 』もたしか全100号くらいで完結だった。組み立てらしい作業はほとんどなくて、パーツを所定の位置に置いたり、積み重ねる程度。接着もしていないので、動かして内部を鑑賞できるところがたくさんある。
たとえば「マッターホーン・ボブスレー」をカパッと開けると「雪男」が登場。
「ディズニーランド鉄道」のトンネルの中には、恐竜時代が再現されている。普段は見えないところまで作り込んであるのが感動的だった。
日本とはちょっと違う建築様式の「ホーンテッドマンション」では、建物を外すとマダム・レオタの水晶玉があるぞ。凝ってる〜!
・ほかにもギミックがある
実はこのジオラマ、ただ眺めるだけではない。電源ユニットがついていて、LEDライトが点灯するのだ。夜のパークの様子を再現できる。
温かい明かりのともったメインストリートUSA。気候のいいカリフォルニアでは、日本のワールドバザールと違って屋根がない。
さらにパレードモードにすると、カラフルなライトが点灯し、音楽が流れるというギミックつき。
長らく油をさしていないので今は試せないが、Nゲージのようにトレインがパークを1周する仕掛けもあった。素晴らしい出来栄えだ。
・引っ越しがめちゃくちゃ大変だった
1つ1つのパーツは驚くほど小さく、精巧にできている。けれどもすべてを組み上げたときのサイズは幅66cm × 奥行58cm × 高さ21cm。大型スーツケースを寝かせたくらいのサイズがある。そして非常に重い。
筆者はこのシリーズの購読中、2度ほど引っ越しをしている。1度目のときはまだ組み上げておらず、パーツがばらばらの状態だったので苦労はなかった。
しかし2度目の転居時。土台も固定してしまい、ジオラマは現在の姿になっていた。パーツは大小さまざま、数百個はあるだろう。しかも前述のとおり接着しているわけではなく「ちょんとのっている」だけのものも多い。
両手でようやく抱えられるくらいの大きな板に、不安定かつ重量のある置物が数百個もグラグラとのっている状態を想像して欲しい。引っ越し業者に頼んだら、追加料金がどれほどになるかわからない。もちろん初期状態に分解することはできるのだが、もとに戻すことを考えると気の遠くなる作業だ。
筆者は「よし、そのままでいこう」と決断した。玄関は難易度が高かったので、掃き出し窓から搬出。幸いにも1階 → 1階の運搬だったので、可能な限り水平を保って自分の車に積み込み、道路の段差に最大限の注意を払いながら運転した。
結果として大きな破損もなく移動できたのだが、腰も腕も痛くなり「もう2度とやるまい」と誓った。2階だったらたぶん無理。
ムーミンハウスのときも思ったのだが、デアゴスティーニは完成するとすごい大きさになるから気をつけなければならない。パーツの状態で届くと実感できないのだ……。
・歴史は繰り返す
ちなみに『週刊マイ・ディズニーランド 』も創刊号だけ税込790円だが、2号以降は税込1490円と倍額になった。「もうやらない」「絶対にやらない」と思うのに、新シリーズが出ると興味をひかれずにはいられないパートワーク。
目下のところ『ブルートレイン 3車両をつくる』(アシェット・コレクションズ・ジャパン)が欲しくてたまらないのは過去記事のとおり。今日も自制心を保つのに必死である。
参考リンク:デアゴスティーニ・ジャパン
Report:冨樫さや
Photo:RocketNews24.
全120号『ブルートレイン 3車両をつくる』が欲しくてたまらない! またもや分冊百科の底なし沼が誘惑してくる…
日本で分冊百科(パートワーク)の老舗といえば「デアゴスティーニ・ジャパン」。筆者は過去に何度か定期購読し、ひどい目……ならぬ幸福な目にあってきた。もう簡単には流されないぞ、と固く誓っているのだが、最近になってデアゴと双璧をなす「アシェット・コレクションズ・ジャパン」がすごい商品を投入。テーマはブルートレインだ!
平成27年の「北斗星」最終運行でブルートレインは引退。筆者は鉄道にはまったく詳しくないのだが、オレンジ色の光をこぼしながら夜闇を走り抜ける寝台列車はやはり憧れだった。
気になってたまらないので、どんな商品なのかシリーズガイドを見てみよう。
・『ブルートレイン 3車両をつくる』
分冊百科の創刊号にはたいがいシリーズガイドがついていて、完成したらどういう姿になるか、どんな機能があるか、シリーズの魅力を全力でアピールしてくる。シリーズガイドを見るためだけに創刊号を買っても惜しくないくらいだ。
今回は冊子のほかに「スタートアップDVD」がついてきた。「作り方ガイドかな? なら見なくていいや」と思ったが、さにあらず。シリーズのコンセプトを紹介しつつ、実際に動いている(本物の)ブルートレインの映像も流れて胸アツだった。これは必見!!
全120号、完成した暁には全長185cmの車両が誕生する。人間の身長ほどの大きさだ。ど、どこに置く!?
シリーズ名の「3車両」というのは「機関車」「食堂車」「B寝台車」のことで、運転席では天井の扇風機まで忠実に再現。寝台車には寝具がしつらえられ、上段にあがるハシゴや、ベッドから落ちないようにするガードもある。食堂車には料理が並ぶぞ。
ギミックも満載。Nゲージのようには走らないのだが、まるで走っているかのように車輪が回る仕掛けがある。ガタンガタンという走行音や車内アナウンス、警笛を流すことも可能。ヘッドライトや室内の蛍光灯、読書灯なども点灯するという。どこまで凝っているんだ!
マガジンは「ブルートレイン大百科」「メモリアルギャラリー」「ブルートレイン列車列伝」と、ブルートレインづくし。お腹いっぱいです……。
・創刊号を組み立ててみよう
創刊号は分厚いボックス型だ。表紙をめくると本誌があり、さらに下にパーツがある。購入前にパーツをのぞくことができる、よく見るスタイルだ。
さっそく組み立ててみよう。創刊号のメインとなるEF66ボディ前面はダイキャスト製で、手に持つとずっしり重い。プラスチックとはまったく違う高級感がある。
細かいパーツはABS樹脂なので、ニッパーで切り離す。
接着剤は自分で用意する必要がある。本体は金属なので「多用途接着剤」がオススメとのこと。デアゴスティーニだと、初回は同梱されていて「なくなったら次は自分で買ってね」というパターンが多く、購入の目安になるのでありがたい。アシェットはもう少し上級者向けかも。
さらに精密ドライバーが必要。100円ショップのもので十分だが、作業中に「え、持ってない!」という人もいるかもしれない。
少し苦戦しながらも細かいパーツを接着。木工用ボンドに比べて、接着剤は間違ったところについてしまったときのリカバーが難しい。さらに角度を調整しながら接着、という作業が必要。誰でも絶対に失敗しないスナップフィットではなく、接着位置を自分で決める昔ながらの模型づくりに近いというか、硬派なキットという印象を受ける。
けれど苦労のかいはある! 機械らしい複雑な形状がリアルに再現されて、まだちょっとしか作っていないのに映える!!
ダイキャストのナンバープレート! こ、これもかっこいい!!
理屈なしの機能美がある! しびれる〜!!
乗務員ドアかな? これからヘッドライトがついて、フロントガラスがついて……。
早く「あさかぜ」のプレートつけたいな〜。
作業は10分ほどで終了。全120号なのでほんの少ししか進まない。が、この「もっと作りたい!」「早く先に進みたい!」という物足りなさが大きな罠であることは以前に書いた。ここから底なしの沼が始まる……。
・週刊で全120号完結予定
刊行は2020年9月9日だったので、すでに数号が発売されている。完成までは2年半ほどかかる計算だ。定期購読者には「運転士フィギュア」などの特典あり。毎号250円(税込)を追加する「プレミアム定期購読」にすると、車両を3段にわけて、ひな壇のようにかっこよく飾れるディスプレイ台がもらえるぞ。ふむふむ、これなら185cmのスペースはいらないな……
はっ! また沼にはまるところだった!!
価格は創刊号だけ特別価格299円(税込)で、第2号以降は通常価格1999円(税込)になる。シリーズが終わる頃には総額いくらになっているのか……その悲劇も過去記事に書いたので、お時間があればご覧いただきたい。
けれども、わかっていても惹かれてしまう魔力が分冊百科にはある。創刊号を触っただけだが、今回のシリーズもクオリティはかなりのもの。欲しいなぁ……どうしようかなぁ……。
参考リンク:アシェット・コレクションズ・ジャパン株式会社
Report:冨樫さや
Photo:RocketNews24.
【ガチャガチャ】渋いっ…! 昭和レトロな「銭湯 ミニチュアコレクション」が懐かしくて涙が出る
吹く風も冷たくなり、お風呂が恋しい季節がやってきた。たまの贅沢の温泉旅館もいいけれど、庶民の生活に根づいた銭湯もまた違った魅力がある。
本物そっくりの精密なフィギュアで知られる株式会社ケンエレファントから、全国浴場組合公認の「銭湯 ミニチュアコレクション」が登場。昭和レトロな世界が広がる、めちゃくちゃ渋いラインナップなのでご紹介したい!
・「銭湯 ミニチュアコレクション」
アイテムは全5種類。カプセル版(税込500円)とボックス版(税抜500円)がある。カプセルはもちろん、ボックスの方もブラインドなので、開けてみるまで中身はわからない。筆者が購入したのはガチャを回すカプセル版だ。富士山カラーなのか、鮮やかなブルーがまぶしい!
開けてみると……「銭湯5点セット」だった! 洗い場に必須の小道具が集まっているぞ!
まずは風呂イスと洗面器。洗面器はごくごくシンプルな白色タイプ。熱気のこもった浴室に、カポーンと響く音が聞こえてくるようだ。
そしてメ、メ、メリット……! 懐かしすぎる!!
パッケージは1980年頃のモデルとのこと。小学校高学年の頃、家族と共用でメリットを使っているって話したら同級生にめちゃくちゃバカにされたの、アレなんだったんだ!? ティモテとか使うのが「おしゃれ」みたいなさ!!
花王石鹸にはちゃんとKaoのマークが掘られている。そうそう、使い始めの一時期にだけ見られる姿!
包装紙で包むことができるんだけど、1953年当時のデザインだそうで、これはさすがに筆者もわからない。
・銭湯といえば富士山
もう1つ開封してみよう。出てきたのは……「銭湯と銭湯絵(富士山)」だ。
タイル張りの湯船に、お湯のクリアパーツをはめ込む。お湯を入れると見えなくなるのだけれど、このタイルの色あせ具合がまた渋いっ!
ちゃんと湯口もある! 水面が波打って、本当にお湯をはっているみたいだ。
「銭湯絵」はシールになっているので、スタンドに貼りつける。「日本に3人しかいないペンキ絵師・中島盛夫氏による銭湯絵を再現」だそう。
いいね〜、雰囲気あるね〜!!
なお、縮尺はそれぞれのアイテムで異なる。後述するように「建物そのもの」まで、同じサイズのカプセルに入っている状態だ。そのため厳密には1つの風景を作るのは難しいけれど、並べてみると昭和レトロな空気感はバッチリ共有している。
・その他のラインナップ
©Meiji
筆者が入手できなかったのは残り3種。まずは “キング・オブ・銭湯” と称されるらしい「大黒湯(東京都足立区)」。建物の外観をそのままミニチュア化している。銭湯らしい長い煙突や、特徴的な屋根、入り口の暖簾(のれん)なんかが忠実に再現されているとのこと。
そして「体重計と脱衣籠」。「株式会社田中衡機工業所の高さ150cmの業務用体重計」だそうで、実在の製品をピンポイントで再現。並々ならぬこだわりが感じられる。針がプリントされたクリアパーツを好きな角度(重さ)ではめ込めるとのこと。実物は150kgまで計測できるんだそうな。
最後の1つは「マッサージ機とコーヒー牛乳」。マッサージ機のメーカーはファミリーイナダ、コーヒー牛乳は明治だ。広くもない脱衣所をどーんと占領するマッサージ機、あったねぇ。
なお、ごくまれにラッキーアイテム「浴場組合公式キャラクター ゆっポくん」が同封されていることがあるらしい。「レアな確率」とのことだから、入っていたらたぶん本当にラッキーだ。
・銭湯に行きたくなる
説明書には温泉よろしく「効果」の欄があって、「楽しい気分になる・遊び心が溢れる・近くの銭湯へ行きたくなる」と書いてある。そういえば、もうずいぶん長いこと銭湯に行っていない。昔ながらの銭湯の価値が見直され、コロナ以前には外国人観光客にも人気だったというから、久しぶりに行ってみようかな?
参考リンク:株式会社ケンエレファント
Report:冨樫さや
Photo:©Meiji、RocketNews24.
【ガチャガチャ】ニッチすぎる…!! タコ足配線ができるカプセルトイ「配線の世界」
いまカプセルトイの世界では「家具・家電」が一大ブームだ。実在の有名メーカーの商品をフィギュア化して、大人の鑑賞にも耐えられるコレクションアイテムになっている。
もはやリアルなのは当たり前。もう精密なだけでは満足できない! もっとマニア心をくすぐる商品が欲しいんだ!! と思っていたら、おもしろいものを見つけた。その名も「配線の世界」。家電ではなく配線にフォーカスしたカプセルトイだ。ニッチすぎるだろ。
・「配線の世界」(全5種 / 200円)
エポック社のカプセルコレクション「配線の世界」全5種。今年5月の発売だったので、品切れの際はご容赦いただきたい。ひとつずつアイテムを見ていこう。
まずは炊飯器! 本体はシンプルな構造で、フタが開くなどのギミックも一切ない。他社商品であれば、最低でもフタが開閉するか、取っ手を動かせるくらいの細工はあるだろう。余分な機能はいさぎよくカットした造形になっている。
その代わり2個口タップがついていて、プラグを差すことができる! 緩みもなくカチッとはまり、製作者のこだわりがうかがわれる。コード部分はヒモなので、自由に曲げられる。
続いてドライヤー。こちらも2個口タップつき。可動はしないが手元スイッチがあったり、吹き出し口の塗り分けもされている。
風で吹き飛んでいきそうな、小さな小さなスマートフォン。充電スタンドに差したり外したりできる。iPhoneにも似た白い機体だが、このタイプのスタンドはあまり見ないから架空の機種かな? ガラケーを思い出させる充電器だ。
湯沸かしポット。4つの家電の中で、これが1番凝っていた。フタが取れ、ベースから取り外すこともできる。
ちょっと前まで「ホテルのポット」のイメージだったけれど、いまはティファールとかデロンギとか家庭用の売れ筋もみんなこのタイプなんだね。
本当ならこれらは、家中あちこちのコンセントを奪い合うライバル同士の関係だけれど……
マルチタップがあれば解決!! この6個口タップを加えて全5種なのだ。
すべてのプラグを差すことができる。これぞまさしく「タコ足配線」!
スマホはともかく、炊飯器&ドライヤー&湯沸かしポットのコンボはさすがにアウトだろう。マルチタップの容量オーバーと思われる。もし安全装置がなければ……発煙、発火、延焼!!
たとえタップがOKでも、電源を入れた瞬間ブレーカーが落ちるヤツだな。
・タコ足注意!!
この企画を出した人は、きっと絡まり合ったコードやずらっと並んだ差込口、プラグの形状なんかにロマンを感じ、商品を作ったのだろう。わかる、わかるよ……。きっと万人に理解はしてもらえないだろうが、こういう発想が大好きだ。
これはおもちゃだからいいけれど、現実にはタコ足配線には気をつけよう。いくら6口、8口と差込口があっても、タップの容量を超える家電をつないじゃダメだぞ!
参考リンク:エポック社、独立行政法人 製品評価技術基盤機構
Report:冨樫さや
Photo:RocketNews24.
【あるある】デアゴスティーニ『週刊ムーミンハウスをつくる』を3年越しで完成させて思ったこと10選
特定のテーマの教材を定期的に刊行する、いわゆる分冊百科(パートワーク)の老舗「デアゴスティーニ」。歴史や自然科学、クラフトからサブカルチャーまで幅広いラインナップなので、1冊くらいは買ったことがあるかもしれません。
……が、最後まで継続したことのある人は少ないのではないでしょうか。筆者は2017年から2019年にかけて、あるシリーズを購読していました。完結号が出たのが昨年秋。創刊号から実に3年のときを経て、先日ついに作り終わったのです。
その道のりは長かった……あまりに長かった。こんなに苦労するのは、きっと筆者だけではないはず。これまでの軌跡を振り返りながら、汗と涙の「デアゴスティーニあるある」をお届けします。
・その1. 創刊号と2号以降の価格差がえぐい
筆者が『週刊ムーミンハウスをつくる』と出会ったのは2017年夏のこと。もとから原作者トーベ・ヤンソンのファンだった筆者は、ムーミンパパが家族のために設計し、お客であれば誰でも大歓迎される「あのムーミン屋敷」が作れるなんて、と心を躍らせました。
創刊号はなんと490円(当時)。もし期待外れだとしても痛くない金額です。速攻で買いました。
そして創刊号は素晴らしかった。「玄関ポーチの階段の土台」と「ムーミンのベッド」を作りましたが感動するできばえ。敬愛するドールハウス作家・村上一昭氏の監修であったことも魅力でした。
しかしこれは他のシリーズも同様なのですが、デアゴスティーニは創刊号だけが「お試し価格」で破格になります。ムーミンハウスも2号以降は税抜1472円。まさかの3倍です。
月にすると6500円ほど。安くはないけれど、カルチャースクールなどに通うことを考えると、出せない金額ではないという絶妙な設定……そしてデスロードが始まるのです。
・その2. 最初の頃は次号が待ちきれない!
分冊百科であるデアゴスティーニは、数年かけて完結に至ります。同シリーズも全100号の予定でした。そのため1号で進む割合はほんのわずか、椅子1脚とか窓1つとか、そのくらいの進み具合です。
作り始めはとにかく楽しい。「もっと作りたい!」「早く次の号が出ないかな?」と待ち遠しくなります。しかも初期の頃は、脱落者が出ないよう「作りやすいもの」「失敗しないもの」がついてくるように思います。亀のような歩みがもどかしい「やる気満々フェイズ」がしばらく続きます。
・その3. 定期購読でホールドされる
シリーズがある程度まで進むと、購読者の数が定まるので、受注販売のような形になります。不特定多数に向けて店頭に並ぶのではなく、自宅やコンビニや書店に届く定期購読にシフトするのです。
筆者は過去の別シリーズで絶え間なく(当時は2週間おき)宅配便が届き、ちょっとした宅配便恐怖症になったので今回はコンビニ取り寄せにしました。
しかし、毎週決まった日にコンビニ店舗に通うというのは、なかなかに拘束感があります。もちろんいつでもやめられるのですが、こういった定期購入や契約は「始めることは簡単だけれど、やめるのが難しい」のではないでしょうか。
コンビニに出向くのが面倒になり、少し時間があるから作業しようかな、と思っても「まだ取りに行っていない」というタイムロスが生じます。破滅への最初のほころびです。
・その4. 上級者に心を折られる
マニュアルは丁寧で、指示どおりに進めれば大概のものは完成します。逆に個性を発揮してアレンジしてもOKです。たとえば色を変えたり、ウェザリング(=風化や汚れの演出)したり、紙で作るべきところをリアルに布にしたりと、創意工夫が推奨されています。
公式でも読者コミュニティサイトを開設し、アレンジ実例を紹介してくれるのですが……その画像を見ると、なんと自分の作ったものがみすぼらしく見えることか!!
ただマニュアルどおりに作ったもの、それも失敗してあの手この手でごまかしているものなんて、見るに堪えません!
最終的に、筆者は既製品に頼りました。金属やガラスの既製品が入るとぐっとリアルになります。欧米ではハウスならハウス、家具なら家具と作家それぞれに専門があって、日本のようにすべて自分で作るのは珍しいそうですよ(言い訳)。
・その5. 思わず関連商品まで買ってしまう
シリーズを購読していると、いろいろな関連商品の販売があります。たとえば道具や画材、完成後の専用ディスプレイケースなどが一般的。
そして本シリーズでは「サブキャラフィギュアとジオラマシリーズ」(全6回 / 送料込1万1340円)というものがリリースされました。本編でもムーミンやスナフキンなどの主要キャラはついてくるのですが、モラン、フィリフヨンカ、スティンキーなど、ファンなら「お!」と思ってしまうサブキャラたち。
「高いお金をかけて作ってるんだから」「せっかくだからコンプリートしたい」という消費者心理を巧みにくすぐります。なんという誘惑!! 抗うことなどできるでしょうか。
・その6. だいたい50号を過ぎると引くに引けない
1年が経過し、折り返し地点。この頃には作り手が慣れたことを見越してか、作業の難易度も高めに。「週末にやろう」「3連休にやろう」などと未開封の号が徐々にたまってくる、という現象が始まります。ためるとハードルが上がる、自明の理です。
「最後まで作れるかな……」という一抹の焦りと不安がわいてきます。しかし、振り返ると作りかけのハウスや家具が山になっている。パーツは断片的に届くので「この号で一段落」という明確な区切りもありません。すでに道具も揃え、相当の時間を費やしてしまっている。
いわゆる「コンコルド効果」です。人はこれまでに払ったコスト(時間や費用や労力)を惜しむあまり、この先もっと損をするとわかっていても引き返せない、という心理に陥るのです……!
・その7. 恐怖の「好評につき延長決定」
筆者の知る限り、少しずつ組み立てるビルドアップ系のシリーズで、急に打ち切りになったり、後から必須パーツの追加購入を迫るようなことは基本的にありません。(試験販売では打ち切りもある。)
しかし恐ろしいのが「好評につきシリーズ延長」です! 予定した作品の完成後、機能が拡張されたり、付属物が作れたりします。過去にドールハウスを作ったときには、数年越しで本体分が完結した後に「隣にアンティークショップを作りましょう」と違う建物の製作が始まったことがあります。
ムーミンハウスでもそれは起きました。100号で完結の予定が、10号延長して「水浴び小屋」を作りましょうと……!
あなたには経験がおありでしょうか。必死で勉強しなければならないときに限って、部屋の片付けを始めてしまう。それもいつもの何倍もの集中力を発揮して、部屋がピカピカになってしまうという怪現象……。
その頃の筆者は、未開封の本編を放置していることに罪悪感を抱いていました。手つかずの材料が山積みなのにもかかわらず、なにを思ったのか101号を作り始め、超スピードで水浴び小屋を完成させてしまったのです。そのやる気があれば本体できるだろ、というスピードでした。
・その8. 普通に買った方が安いことに気づく
追加シリーズも完結し、未完成ながらも商品の受け取りから解放されて安堵すると、禁断の問いが頭をかすめました。いったい、いくらかかったんだろうかと。
計算してみると、ここまで支払った総額はシリーズ全100号(税抜14万6182円)+追加10号(税抜1万4720円)=17万円以上!! さらに指定の絵の具なども買い揃えています。
これだけあれば、海外ドラマでよく見るような、子どもの背丈ほどもある立派なドールハウスを余裕で買えちゃいます。家具もヴィクトリア調でもロココ調でも買い放題です。
しかも当のデアゴスティーニから、お得な特別セット販売(全100号セット / 税抜12万5000円)まで出ているじゃありませんか!
そう、1号1号はたいしたことなくても、数年間も買い続けるとものすごい金額になるのです! これはたぶんロボットでもスーパーカーでも秘密基地でも同じことが起きているんじゃないでしょうか? 全国の同志よ!!
・その9. でも自分で作るとめちゃくちゃ楽しい
数々の困難を乗り越え、ついに竣工しました。地上4階、地下1階建てのムーミンハウスです。
テラスではコーヒーを飲みながら、家族だんらんをお楽しみいただけます。最初の頃やっていたウェザリング加工が見られなくなっているのは気のせいです。
地下には食料庫があります。冬には深い雪に閉ざされるムーミン谷、冬眠できない人間族のお客様でも安心です。映画『シャイニング』のように豊富な食料が備蓄されています。
なお、読者プレゼントだった「お風呂のスポンジ」を「パン」だと勘違いして食料棚に貼り付けてしまったという失態も見て取れます。
1階には広いリビングダイニングがございます。難しすぎて、同じ号を2回買って作ったシャンデリアが輝いております。
キッチンです。天井から下がっている寛永通宝のようなものは「ハパンレイパ」というフィンランドのライ麦パンでございます。粘土作業があまりに下手で「パンに見えない」と悩んだものの、修正できるスキルがなく投げやりに天井にとりつけた、いわくつきの1品です。
2階にはバスルームと、快適なメインベッドルームがございます。
3階には執筆活動のできる書斎もご用意しております。家族の声が届かない個室ですので、テレワークにも適しています。
屋根裏には子ども部屋がございます。縄ばしごで地上に直結しており、反抗期のお子さんにも便利です。
昨今のアウトドアブームに先駆けまして、テントも付属しております。十分なソーシャルディスタンスを確保できます。
・その10. 何度失敗しても「今回こそは作れる」と思ってしまう
こんなに苦労しても、新シリーズが出るとこりずにまた買ってしまう、それがデアゴスティーニ。なぜなら、そこに夢があるから。「これからあの○○を作るんだ!」というワクワク感は何物にも代えがたい。そしてクオリティの高さは折り紙つきで、完成した作品への愛着もひとしおです。
ええ、筆者はデアゴスティーニを愛しています。これからも新たなシリーズを買うでしょう。
なお、筆者宅の納戸には20年ほど前に購読し、未完のまま保管されている「週刊マイ・ドールズ・ハウス」があります。いつか作ります、きっと……たぶん……いつか……
参考リンク:デアゴスティーニ・ジャパン
Report:冨樫さや
Photo:RocketNews24.