近頃は、タレントのマツコ・デラックスさんやミッツ・マングローブさんなど、いわゆる「女装家」を名乗る芸能人の活躍が目覚ましい。女装が広く認知されるようになってきた印象を受ける。
しかし女装と一口にいっても、その目的と実態はさまざまだ。女装をしない人からすれば、興味はあってもその内情がわからずに、イメージが先行しがちである。「女装をするってことは、性転換したいの?」や「女になりきるってことは、男が好きなの?」とこういった具合に。
実際に女装をしてみると、イメージとは異なる世界に驚かされるはず。そんな女装の本質的な部分について解説していきたいと思う。
女装をしてみたいと思いながら、その一歩が踏み出せない人は、「普通ではない人のすることだ」と固定観念を持っていることが多い。また身近なところに女装者に対して、「変態なんじゃないか」と思い込んでいる人もいるはず。だが、本来はもっと柔軟で、それぞれ自分に合わせて女装というシンプルな行為を楽しんでいる。
これから数回に分けて女装についてその内情を紐解くために、まずは女装にまつわる専門用語を紹介しよう。理解を進めることによって、自分の女装願望や女装者への理解が少しでも広くなってくれれば幸いである。
・女装子(ジョソコ)
女性の装いをたしなむ男性の一般名称。ファッションとして女装を楽しむ人や、女性の心を体験するために女装する人まで、その動機は幅広い。自身は自らの性を「男性」と認めていることが多く、男性としての生活を送りながら女装を行うが、女装体験を重ねるなかで、将来的に女性となることを目指す人もいる。恋愛対象は女性であることが多いが、女装者や男性を受け入れる人もいる。身体的には、男性のままかホルモン注射を投与する程度。性転換を最終目的とする人は少ない。
・男の娘 (オトコノコ)
男性の心を持ちながら、女装を行う男性。元々は漫画などのキャラクター設定に多用されていたところ、実社会でも女装に代わる新しい用語として定着した。「娘」という字面から特にかわいらしく、若い女装者のことを指す。最近では、「女装」という言葉を避けたい人や、オタク系趣味の延長で女装を始めた人にも好んで使われる。漫画では女性扱いとなるため男キャラとの絡みがほとんどだが、実社会における男の娘の恋愛対象は女性であり、身体的には男性のままという人が多い。
・女装家
男性の身体と心を持ったまま、女装を行う男性。派手なファッションやメイクで女性の性を強調しているのが特徴。恋愛対象はほとんど男性(=ゲイ)であることが、他の女装と大きく違う点。ドラァグクイーン(男性が女性の姿で行うパフォーマンス)としての活動や女装を売りにした接客を行う人も多い。身体的には男性(例:マツコ・デラックス、ミッツ・マングローブ)。
・ニューハーフ
本来は男性が、女装して就業している様子を指していたのだが、最近では日常的に女性として生活する人も指す。自身は「実は男」や「元男」と認め、性別を「個性のひとつ」として活用する人が多い。ダンサー、パフォーマーなど、就業時のみ女装する一部の人を除けば、恋愛対象はほとんどの場合男性。身体的には、男性そのままの人から、性転換を行った人まで実に幅広い(例:はるな愛)。
・MtF(エムティーエフ)
「Male to Female」の略。身体的には男性であるが、性自認(心)が女性。「性同一性障害」の人も含まれる。心身の性別不一致による葛藤(かっとう)から、生来の性別を他人に明らかにせず、女性社会に同化して生活する人が多い。ニューハーフは「元男性・実は男性」を認めているので、ニューハーフとは大きく異なる。恋愛対象は一般的に男性。身体的にはホルモン治療や性転換手術など行い、日常生活を女として暮らすのを目的とする(例:佐藤かよ)。
・純女(ジュンメ)
生物学上の女性で、そのまま女性の格好をしている人を指す。つまり普通の女性を指す言葉。男性社会である女装業界において、女性を区別するために用いられる。
・趣味女(シュミジョ)
趣味女装、の略。東京・新宿2丁目界隈で、パフォーマーやニューハーフ以外の女装者を指す言葉。「プロ意識がないからレベルが低い」ということで、残念ながら蔑称(べっしょう)とされる。
・オカマ
一般人にもおなじみのこの言葉。女性っぽい男性、女装した男性のことを指すもので、長らく蔑称と言われているが、オカマが自分をネタにして「オカマ」というのはアリ。とはいえ、むやみに人にいう言葉ではないので、気をつけよう。
・パートタイム女装
仕事後や週末などのオフタイムにのみ、女装を楽しむ女装子のこと。一般的な女装者はほとんどこれにあたる。ちなみに反対語はフルタイム女装。
以上が女装にまつわる専門用語である。それぞれの用語について客観的に解説したが、実際はその境界線はとてもあいまいなもの。とはいえ、これらの用語が指し示す意味は、時間の経過とともに変化していくので、かたくなに「女装子ってこうあるべき」などといった定義に縛られることなく、理解を深めて頂きたい。また人によって、スタンスも異なるので女装してみたいという方は、自分なりに楽しんでみてはいかがだろうか。
執筆: 女装カメラマン・立花奈央子 公式サイト / Twitter
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