立ち食いそば屋の「名代 富士そば」は東京だとどこにでもあるチェーン店。もはや風景の一部と化しているため、まともな立ち食いそば屋だと思っている人も多いかもしれない。だがしかし、よく見ると店舗限定メニューがとち狂っていることがある。
富士そばの広報によると「大体店舗の人が考えていて、あまりボツがない」という店舗限定メニューは、時に鬼のように攻めていることがあるのだ。この度、銀座店で、1匹の鬼に出会ったため食べてみた。
・まんじゅ天とは
そのメニューの名は「まんじゅ天そば(税込490円)」という。字面だけ聞いてもピンと来ないかもしれないが、店外に出された看板を見ると一発だ。メニュー写真では、天ぷらが切られて中身が見えているのだが、衣の内側には餅があり、さらにその奥には黒い物体が写っている。
そう、餡子(あんこ)だ。「まんじゅ」とは饅頭。どうやら、まんじゅ天はあんこ餅を揚げたもののようである。
・気持ちがほとばしるそば
まんじゅ天単品ならばスイーツとして普通にイケてるのだが、日本蕎麦の具になっているところが非常に惜しい。いや、もしかしたら、写真ではそばに乗っているけども、注文してみたら別皿で出てくる可能性もある。阪急そばのポテそばはそうだった。乗せるかどうかは任せます的な心遣いである。そこで、注文してみたところ……
がっつりライドオンしていた。
なんなら出てきた段階ですでにそばつゆが染みている。なんとしても一緒に食べさせたいという気持ちがほとばしるようではないか。
・鬼が出るか蛇が出るか
待てよ? 逆に言うと、あの富士そばがここまで一緒に食べさせたいということは意外に味がマッチしているのではないか?
考えてみたら、私(中澤)はあんこ餅をおかずに日本蕎麦を食べたことがない。つまり、一緒に食べた時に甘いのかしょっぱいのかすら想像がつかないのである。ケミストリーが起こっているのかもしれない……。そこで思い切って食べてみた。
まんじゅ天の衣から染み出すカツオ出汁と醤油の味。その中から餡子の甘みが口に広がっていく。今だ! そばをかき込んだところ……
そばの食感に広がる餡子の甘み。例えるなら、3歳児がクレヨンで塗ったぬり絵のように、圧倒的な餡子の味がそばを塗りつぶし、つゆとつばぜり合いをする。うん……
餡子いらん。
想像してみて欲しい。そばつゆと餡子の味を。その2つの味が交わることなく別々に舌を直撃する。紛れもなくそばと餡子餅だ。そして、どうあがいてもそれ以上ではない。
・攻めの姿勢は天晴
念のため、そばつゆを多めに飲んでみたりもしたが、そばつゆの味がしただけだった。陸上トラックのようにどこまでも平行線。それがまんじゅ天そばの味である。
ちなみに、富士そばのFacebookによると、「まんじゅ天そば」の展開は銀座店が2店舗目であり、最初は6月1日に渋谷桜丘店で開始されているようだ。取扱店舗を広めているだと!? やはり、富士そばの攻めの姿勢は天晴と言える。
・今回紹介した店舗の情報
店名 富士そば銀座店
住所 東京都港区新橋2-18-3
営業時間 6月29日現在5:00~22:00、持ち帰りのみ22:00~5:00
定休日 無休
参照元:Facebook富士そば[1]、[2]
Report:立ち食いそば評論家・中澤星児
Photo:Rocketnews24.