『メスティン』とはスウェーデン発のアウトドア用調理器具のこと。日本風に言えば「ハンゴウ」に近く、フライパン代わりになるということで愛好家を中心にキャンプの必需品になっている……のだが、それは何も今に始まったことではない。もちろん新製品でもない。
ところがごく最近、急にテレビや雑誌でメスティンの名を目にするようになった。外出自粛の影響で “キャンプごっこ” をする人が増えているのだろうか? ためしにネットで探してみると、どのサイトでも「品切れ」「入荷未定」状態だ。う〜む。
仕方なくキャンプ用品店へ行き尋ねるが、お店の人は苦笑を浮かべて「在庫があるわけないでしょ」といった口ぶりなのである。な、なぜだ!? 去年まで普通に売ってただろメスティン!?
・日本人そういうとこある
「なぜなのか」とお店の人に詰め寄ってみたところ、メスティン人気の大きな理由は以下の3つ。
・煮る、焼く、揚げるが1つでできる
・弁当箱として使える
・軽くて持ち運びしやすい
いや待て!!! みんなフライパン持ってないのか? そして弁当箱を買う余裕もないのか? そもそもキャンプ以外で調理器具を持ち歩く必要ってある!?
メスティンがアウトドアに便利で日常生活に応用もできることはよ〜く分かる。しかし日本中から在庫が “突然” 消滅する理由にはならない。こんな言い方をするとお茶の間はショックを受けるかもしれないが……みんな、メディアが作り出した偶像(ブーム)に流されているんじゃないだろうか?
・でも、欲しいよネ!
ま、そうは言っても人気となれば欲しくなるのが人情だ。「なにか代用品は?」と再び尋ねてみると、『ラーメンクッカー』なるものを紹介された。驚くべきことにこの商品、お店の人いわく「メスティンとほぼ変わらないモノ」らしい。
どういうことかというと『メスティン』も『ラーメンクッカー』も同じ “アルミ製のクッカー(アウトドア用の調理器具)” 。そのため性能的な差はほぼなく、違いを挙げるとすれば「丸か四角か、という点だけ」と言うから驚きである。本当かな!?
「丸と四角の違いは……好みですかねぇ」と、お店の人は煮え切らない様子だ。ちなみに昨今のブームを受けて様々なメーカーから『四角いクッカー』が発売されているが、『メスティン』とは『トランギア社』の商品名のこと。
つまり「ダイソーのメスティン」等という言い方は厳密には間違っていることになるため、探している人は注意してほしい。ただし現在、そういった類似品すら軒並み品切れ状態ではあるが……。
・ラーメンクッカーの性能は
さて購入したユニフレームの『ラーメンクッカー900』(税込2240円)は直径約13cm、重さ150グラムと非常にコンパクトである。取っ手を収納することで調理器具にも食器にもなるスグレモノだ。
まずは商品名のとおりインスタントラーメンを茹でてみると……
スゴい! 確実に普通の鍋より早く加熱できる!
クッカーの代表的な素材はアルミ、チタン、ステンレスの3つ。ステンレスは丈夫な代わりに重く、チタンはメチャ軽いが調理にやや不向き等、それぞれ一長一短あるようだ。今回検証するアルミは熱伝導率に優れているのが特徴。ただし変形しやすいらしいから注意な!
取っ手が少し熱くなるので注意しつつ……
焼きもの……
炒めもの……
心配していた揚げものもバッチリできました!
・心境の変化
不思議なものでラーメンクッカーで色々な調理法を検証するうち、だんだん楽しくなっちゃっている自分がいた。普通の調理器具と比べればやや安定が悪い、容量が少ないなど当然劣っている部分はあるのだが、どうやら「キャンプみたいなウキウキ感」が生まれているらしい。
そして何より、食器に移し替えずにそのまま食べられるのが最高だ。「洗い物が減って楽チン」なのはもちろん、ここにもやはり非日常な体験をしているという “ウキウキ感” がある。普通の鍋だとわびしい「鍋食い」もクッカーならオシャレでイイネ!
・アルミ鍋サイコー!
恐らくメスティンと性能的には遜色がないラーメンクッカー。1つだけ “弁当箱として使える” という点に関して言えば、ひょっとすると四角くて浅いメスティンに分があるのかもしれない。
弁当一人前を入れるのにラーメンクッカーの容量は十分すぎるほどだが、表面積が狭いぶん詰めにくいのは確か。サンドイッチ等もメスティンより入れづらい気がする。その反面、汁ものを調理するには丸型が向いていると考えられるし、形状に関しても一長一短だ。
「四角じゃなきゃダメなの!」というこだわりがある人は、残念ながら品薄解消を待つしかないだろう。しかし「メスティン流行ってるから使ってみたいな〜」という人なら、丸型アルミ製クッカーで十分に代用可能かもしれないよ?
「メスティン品薄問題」を浅はかなブームと捉えていたのは、どうやら間違いだったらしい。代用品の丸型クッカーですら相当楽しめるということが判明してしまったのだから。娯楽の減ったコロナ禍において、自宅でこんなウキウキを味わえるのなら「ブームも必然」なのかもなァ。
Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.