『水草を育てるキット』を発見し、私は即座に購入を決めました。今は亡き祖母が金魚鉢に水草を浮かべていたのは、古き良き思い出です。都心で野生の水草を見つけるのは大変ですが、イチから育てるという手がありましたね。夏らしくてサイコー!
かくして育て始めた水草は説明書によると、完全に発芽するまで20〜30日を要するのだとか。すっかり忘れていましたが、私そういえば5日間ほど家を空ける用事があるんでした……ここは仕方ありません。同僚の原田に預かってもらうことにしましょう。
・じっくり育成
『育てる水草(L)』は東急ハンズで3080円(税込)。ガラス容器、土、タネ、流木までセットになっています。
あとは水と光さえあれば水草が育つキットです。
とはいえ最初からヒタヒタに水を入れるのではなく、まずは土を湿らせた程度の状態からスタート。発芽後しばらくは鉢植え状態のまま育てます。
タネをまいたら土を乾燥させないよう、霧吹きで1日数回水をまきます。ある程度育つまではラップなどを被せるといいのだとか。
すると……ほんの4日で芽が出てきた〜!
毎日少しづつ増えてゆき……
2週間が過ぎた頃にはけっこう緑々しい感じになってます。小さな新芽がカワイイ!
・頼みやすい人物
さて先に述べた通り8月下旬、私は家庭の事情で自宅を留守にせねばなりませんでした。そこで水草を託すことにしたのが当サイトの原田たかし記者です。
当編集部メンバーがみな「小さなお子さんがいる」「忙しい」等といった事情を抱える中、原田は基本的にいつもヒマそうにしていることで知られています。そして何より、彼はなんとなく “頼みごとをしやすい雰囲気” を生まれ持っているのです。
大都会・東京でこういう知り合いを持つことは大変ありがたく、また心強いもの。いつかドカンとお返しをせねば……と思いつつ、今回も一方的に水草の世話をお願いしたところ快く引き受けてくれました。ありがとう、本当にありがとう。
私は原田に水草を手渡し、「土が乾く前に霧吹きをかけてほしい」と伝えます。幸い当編集部はテレワーク期間中なので大きな負担にはならないでしょう。あと「3日に1度、水草の画像を送って」ともお願いしましたが、そういえば預ける期間は5日間だから、送ってもらうのは1度だけってことになりますね。
それから3日後、LINEで水草の画像が送られてきました! 彼はつくづく使える男なのです。どれどれ、さぞかし新芽、増えとんのやろな〜!
……………
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> 枯れているようにしか見えない <
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・状況を整理しよう
送られてきた画像には砂漠のようにカラカラな茶色い土……あとはうっすらコケのようなものが写っていました。3日前の画像と比較すれば枯れているようにしか見えませんが、当の原田がその件に言及する様子はありません。むしろ元気いっぱいに「おはよう!」などと発言しています。
ここでお断りしておきたいのは、仮に水草が枯れていたとして、私に原田を責める気は毛頭ないということ。他人にものを預ける以上、最悪返ってこなくても仕方ないという覚悟はしているつもりです。ましてや原田は植物に関してド素人。金をもらっているわけでもない。善意のみで引き受けてくれた人を、どうして責められましょうか。
ただ……1つだけ気がかりなのは、彼が「水草が枯れていることに全く気付いていない様子」という点なのです。なにせ水草ド素人のことでありますから、ここは百歩譲って “枯れていることが分からなかった” のだとしましょう……だとしても、です。 “3日前と明らかに見た目が違う” ことには、気がついてもよさそうなものではありませんか。
さらに千歩譲って “絶望的に撮影が下手くそ” だとしましょう。直接確認したわけではないですから、「実は枯れていないけど枯れたように見えている」という可能性も残されていますよね……だとしても、です。 “枯れたような画像を送っちゃっている” ことには、気がついてもよさそうなものではありませんか。
さらにさらに万歩譲って「枯れていることには気付いているが、枯らすなとは言われていない」という言い分だったとしましょう。それは完全にその通りなので、何ひとつ反論の余地はありません。が……仮にそうだとすれば、同僚の原田は “ちょっと難しいヤツ” ということになってしまいます。
・慎重に事実確認
以上の可能性をよ〜くふまえた上で、私は原田に電話をかけてみることにしました。もちろん私の事前説明が悪かったことは重々承知しています。何度も言いますが水草が枯れた事実について、原田サイドに一切の落ち度はありません。
しかし……枯れた “後” の原田の行動に関しては、やはり少しだけ気になるのです。今回は水草だからまだ良かったですが、もしも預かったのがペットや子供だったら? 同僚として、そのあたりの認識を確認しておくのが彼のためだと考えました。果たして真相は……
原田「えっ、枯れてるって? そんなはずは…………あっ!? か、か、枯れてるゥ〜〜〜!!!!!」
・コトの真相
やはり、残念ながら水草は枯れていたようです。「全く気づかなかった」と言う原田に詳しく話を聞いてみると、そこにはヒトがそれぞれに持つ価値観の違い、意思疎通の難しさという問題が潜んでいました。
【原田の釈明】
・「土が乾く」という意味が分からなかった
・そのため1日1回の水やりで十分だと思い込んでいた
・「水をやることが任務」としか考えていなかった
・正直、水草の状態は全く見ていなかった
まず最初の問題は、私が「土が乾いているかどうかは、見りゃ誰でも分かる」と思い込んでいたことにあります。日当たりや温度についても「普通に考えれば分かるだろう」と考えていたのですが、そもそも100人いれば100通りの「普通」があるのです。原田の水草認識がゼロだということを、もっと考慮すべきでした。
今になってみると私の指示は非常に雑で漠然としており、もっと具体的な内容をメモにでも記しておく必要があったと考えられます。そして「不測の事態が起きる可能性もあるから、水草の様子を観察しておいてほしい」とも付け加えればよかった……完全に私の責任です。
・思いやりの心
後日「弁償する」という原田の申し出を、私は「気を使わせて悪かった」と丁寧にお断りしました。
言わなくても分かるだろうと思っていた私、細かく指示してほしかった原田……。つまるところ、どちらにも想像力と思いやりが足りなかったのです。互いに反省することでこの失敗を次に生かせるはず。そういう意味で今回の出来事は非常に有意義な体験でした。
【原田の後悔】
・事前にもっと詳しく聞いておけばよかった
・でも臨機応変に対応する必要もあった
・同じ過ちを繰り返さないようにしたい
……とはいえ、水草には大変申し訳ないことをしてしまいました。しかし「また次も水草を預かりたい」という原田の心意気に応えるためにも、私はもう一度水草を育ててみようと思います。
皆さんも他人にものを預ける or 預かる際は、トラブルを防ぐため、やりすぎなくらい事前確認を行っておいたほうがいいでしょう。たまに不測の事態も起こりえますが……互いに誠意を持って乗り越えれば、信頼関係はより強固なものになるはずです。
Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.