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【実話】たまたま目撃した「アルコール泥棒」が令和イチ切なかった話
これもご時世なのか──。私、P.K.サンジュンは “それ” を目撃した後、なんともやるせない気持ちになってしまった。つい先日、私は近所のドラッグストアで「法的にはセーフ(?)」だけど「モラル的には完全にアウト」な、アルコール泥棒を目撃した。
あれから数日が経過し、改めて振り返ってみたものの、心に残るのは切なさだけ。いったい誰が悪くて、いつから世界はこんな風になってしまったのだろう? 私はあの時どうすべきだったのか……? 答えをご存じの方は、ぜひ教えて欲しい。
・普通の日常の中で
つい先日のこと。現在、週の半分以上はテレワークで過ごしている私は、お昼ご飯を買いに自宅近所の弁当屋へと足を運んだ。ギラギラと太陽が照り付けるとても暑い日ではあったが、道行く人のほとんどがマスクを着用している。
弁当屋に到着する手前、私の目に留まったのはドラッグストア。「そういや、ティッシュが残り1箱だったな」と思い出し、弁当を買いがてら箱ティッシュを購入していくことにした。誰にでもある、ごくごく普通の日常だ。
店の外に山積みされていた箱ティッシュを手に取り、会計を済ませようと店内に足を向ける私。そのとき目撃した男こそ、今回の主人公「アルコール泥棒」である。
・それは突然に
年齢は少なくとも70代、いや……80代でもおかしくない男性で、背丈はさほど高くない。ハット型の帽子をかぶり、加えてメガネとマスクを着用していた。何も無ければ記憶にすら残らない、どこにでもいそうなご老人だ。
だがしかし、結果的にご老人は私の記憶に強く残った。なぜならば、普通ではなかなかあり得ない「アルコール泥棒」をしでかしたからである。ご老人はドラッグストアの入り口に設置されているアルコール消毒液に手を近づけたかと思うと、ものすごい勢いでヘッドをプッシュし始めた。
これだけならば、単なるアルコール消毒に過ぎない。問題は、その手に数枚のティッシュが確認されたこと。そう、ご老人はその場で手を消毒するためではなく、店のアルコール消毒液をティッシュに含ませて持ち帰ろうとしていたのだ。
・ただの消毒じゃなかった
なぜ持ち帰ろうとしていたのかがわかるのか? もしかしたらティッシュにアルコール消毒液を含ませて、体のどこかを消毒するつもりではないか? この状況だけならば、それらの可能性もゼロではあるまい。だがしかし、ご老人はティッシュに含ませたアルコール消毒液を持ち帰った……。
持参していた、ジップロックに入れて。
ご老人は人目を気にする様子もなく、ティッシュにアルコール消毒液を含ませてはジップロックに放り込み、ティッシュにアルコール消毒液を含ませてはジップロックに放り込む作業を繰り返していた。呆気にとられていたため明確な数は覚えていないが、少なくとも5ターンはしていたハズだ。
やがてご老人はジップロックに封をし、店に入ることもなく立ち去って行った。仮に法的には問題は無かったとしても、モラル的には完全にアウトな「アルコール泥棒」である。ハッキリ言って非常識であり、人として恥ずべき行為であろう。
・切なさしか残らない
ただ私は考えた。「アルコール消毒液が買えないほどお金に困っているのかな?」と。だとしたら、あまりにも切なくはないだろうか? わずか数百円の商品が買えず、恥を忍んでアルコール消毒液をティッシュに含ませていた心情を思うとあまりにツライ。
逆に「単なる図々しい老人かも?」とも考えた。だが、その場合もツライことは同じ。人生の酸いも甘いも知り尽くした、本来ならば敬われるべきご老人が、白昼堂々「これくらいいいだろ!」と開き直っているとしたら、こちらも答えは「切ない」だ。
さらに言えば、このご老人には子供も孫もいて、かつてはそれなりに部下にも慕われていて……なんて考え始めたら、何とも言えぬやり切れなさを感じてしまった。いったい誰が悪くて、いつから世界はこんな風になってしまったのだろうか?
2020年8月某日。令和も2年目を迎えた夏のとある日。あの日、あのとき、あの場所で、あのご老人に私は何かしてあげられただろうか? 結果的には「何も言えなくて……夏」であった。
執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.