謎に満ちたオーパーツ「ネブラ・ディスク」の出自に新説登場 / 人類最古の天文盤の真相はいかに

ネブラ・ディスクは、ドイツのネブラという街の近くで1999年に出土したとされる青銅製の円盤。片面には金で太陽、月、そして星々を模した装飾がほどこされており、太陽暦と太陰暦の両方の概念が取り入れられた人類最古の天文盤で、およそ3600年前の青銅器時代に作られたものだと考えられています。

ですが、その頃のヨーロッパにはネブラ・ディスクの作成を可能とするレベルの天文学は存在しなかったとされ、場所や時代にそぐわないことからオーパーツの1つとしても有名です。遊戯王のカードにもなっているので、そちらで知った方も多そう。そんなネブラ・ディスクですが、出自に疑問を投げかける論文が発表され、物議を醸しています。

・盗掘品でした

The New York TimesやLive Scienceが報じています。バイエルン州立考古学収集館のルパート・ゲハルド氏とゲーテ大学のリュディガー・クラウゼ教授は、ネブラ・ディスクが他の場所で発掘された後にネブラに移動され、しかもこれまで考えられていたよりも1000年ほど最近の、鉄器時代に作られた可能性があるとする論文を発表しました。

通常なら発掘された場所は正確に記録されて議論の余地はなさそうなものですが、これにはネブラ・ディスクが発見されるまでの経緯が関係しています。実はネブラ・ディスクは正規の発掘作業によって見つかったものではなく、盗掘者によって他の財宝と共に違法に市場にて取引されそうになっていたところを2002年に保護されたもの。

発掘された年や場所は、この時に逮捕された盗掘者の供述によるものです。そしてネブラ・ディスクが3600年前のものであるとする根拠は、警察によって盗掘者から回収された、ディスクと共に出土したとされる斧や剣など他のネブラの財宝を調査して得たものでした。

今回ゲハルド氏とクラウゼ教授は、土壌分析やディスクの金属を調査し、ディスクは別の場所で発見されたにもかかわらず、ネブラの他の財宝の一部として売られたという結論に至ったもよう。そしてディスクの特徴的なデザインから、ケルト文明の影響を受けた人々によって鉄器時代に作られたものではないかと述べています。

・反論も

これまでの定説をひっくり返すような今回の論文に対し、現在ネブラ・ディスクを展示しているドイツのハレ先史博物館は即座に英語とドイツ語で声明を発表。ゲハルド氏とクラウゼ教授の論文に対し

「Both of these statements are demonstrably incorrect(どちらの主張も明らかに間違っている)」)

と全面的に否定する構え。

これまでもディスクの真相をめぐって論争が巻き起こることは度々あったようで、The New York Timesは以前ディスクを研究したことのあるトゥール・イシュトバーン博物館のエミリア・ パーストル氏の以下のコメントを紹介しています。

「that can be debated forever until some very accurate absolute dating method can be found for metals(金属のための非常に正確な年代測定方法がみつかるまで、永遠に議論され続ける)」

……なるほど。とりあえず、現代の技術力ではお手上げってことでしょうか? 個人的にはオーパーツというのがとてもワクワクするので、真相が明らかになって欲しいような、欲しくないような複雑な気分です。

参照元:The New York TimesLive Scienceハレ先史博物館DGUF
執筆:江川資具
Photo:Wikimedia Commons



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