昨今ではどうも、妙に荒ぶった新メニューの印象が強い「かつや」。当サイトでもそれなりの頻度で「かつや」の新作を紹介しているが、基本的にはトガったコンセプトに対するツッコミ的な内容が多いと思う。
2020年10月2日から登場した『豚すき煮肉うどんチキンカツ』もまた、その情報量や欲張り感にツッコミ待ちな雰囲気を感じさせる。しかし、実際に食べてみたところ、あらゆる方面で丁度良く、そして王道的に美味いことが発覚。これだよ、こういうので良いんだよ。
・ヤバそうな雰囲気だが
情報だけ見ると、うどんと豚すきとチキンカツが入っていることによる頭の悪い欲張りセットじみた感じは……確かにある。実際に、ネットではその点ばかりが注目されているように見受けられる。しかし冷静に考えれば、すき焼き風の肉うどんにカツが入っているというのは、そう突拍子のないものではない気もする。
すき煮にうどんを入れるのは割と普通だと思うし、チキンカツだって、カツ煮というものがある。であれば、うどん入りの豚すき煮とカツ煮を混ぜたに過ぎない。味の方向性は元からどちらも似たようなもの。これは、ネタではなく普通にウマいんじゃなかろうか。
とは言え食べてみないことには何とも言えない。ちなみに丼バージョンと定食バージョンがあり、丼は税込み649円で、定食は税込み759円。どちらか迷ったが、定食にはとん汁がつくということで定食をチョイス。
・圧倒的親和性
程なくして出てきた『豚すき煮肉うどんチキンカツ』。やはりそうだ。入っている要素だけを書き並べるとイロモノ感が出るが、見た目には全く違和感がない。上に乗った白髪ネギがより親和性を増している。
試しにネギをどかしてみたところ、そこには綺麗に円を三分割するように配置された、うどん、豚、鶏が。
なんとなく、うどん、豚、チキンカツの中で最もイレギュラー感があるのはチキンカツだと思うが、煮汁がたっぷりしみ込んでいて、味的にも見た目的にも果てしなく馴染んでいる。
うどんや豚については言わずもがなだ。むしろ、この三者はもとから一緒に混ぜ合わせられてしかるべき存在だったのではないか。そんな思いすらも出てくるほどに親和性が高い。まさに三位一体。ウマさのトリニティ。
商品名では全く触れられておらず、筆者もなんとなくどかしてしまった白髪ネギも、実にいい仕事をしている。ラー油によって程よい辛さのネギが、やや甘めな煮汁がしみ込んだうどん、豚肉、チキンカツの全てをピリッと締め上げる。
・王道
そのウマさは驚きや斬新さを伴うものではなく、まるでホームに帰ってきたかのような安心感のあるものだ。『豚すき煮肉うどんチキンカツ』は、邪道を往(い)くかのように見せつつも、味はどこまでも王道だったのだ。
また、「かつや」は時折狂ったかのようなボリュームで胃袋を破壊しようとするムーヴを見せることがあり、今回も商品名はその可能性を感じさせる。しかし実際の分量は割と程よく、万人向けでいい感じに満足できるサイズとなっている。
邪道感ある組み合わせを全面的にプッシュしてヤバさを漂わせつつも、背後にあるのはストレートなウマさと安心で安全な分量。『豚すき煮肉うどんチキンカツ』は名前や雰囲気のヤバさに注目するだけではなく、その王道的な実態がもっと評価されるべきではなかろうか。普通に完成度が高く、大食漢でなくとも安心な分量だ。是非とも実際に食べてみて欲しい。