「チェーン店の料理は基本的にどこで食べても同じ味」だと、人は勘違いしがちである。しかしながら、実際には1つとして同じ料理は無い。どれだけマニュアルに沿って作られたものであっても、人の手が加わっている以上、当然ながら “差” は存在する。
分かりやすいのは「餃子の王将」だが、吉野家だってそうだろう。どこで食べても同じ牛丼に思えるものの、確実に “違い” はある。多くの人にとってその違いが感じ取れないだけ。分かる人には分かるのだ。
たとえば、吉野家の従業員。現場にいる彼ら・彼女らは違いを感じ取り、まかない牛丼を食べるときにこんなことをしているらしい。
・吉野家で働く人が実践している「まかない牛丼の美味しい食べ方」
「玉ねぎを最初に一切れ食べ、たれの染み具合を見る。それから普通に食す(50代男性)」
「先に牛肉だけを食べて甘みとたれの濃さをチェックし、七味などで調整をする(50代女性)」
「トッピングなしで食べて味を確認! 残り半分くらいをトッピングして食べる(40代女性)」
「牛肉を半分ほど食べて味を確かめる。ご飯を少し食べて味を確かめる。牛肉を全部食べ終えたら、半熟玉子を入れて混ぜて食べる(10代男性)」
──これを読んで、「そんなことする意味ある?」と思った人は素人である。牛丼は生きているのだ。1杯1杯、それぞれに個性がある。ゆえに、プロはその1杯にあったベストのアプローチを探るため、ときには玉ねぎを一切れだけ食べ、ときには牛肉だけを先に食べる。
「結局どっちを先に食ったらいいのか?」と思う人だっているかもしれないが、プロフェッショナル同士で手順に多少の違いがあるのは当然と言えるのではないか。むしろ、1杯ごとの個性を探ることはそれだけ繊細な作業であり、マニュアル化できるものではないことを証明していると言えるだろう。
ちなみに、私は実際に「玉ねぎを一切れ食べる方法」と「牛肉だけを食べてみる方法」を試してみたのだが、今まで食べた牛丼との違いがさっぱり分からなかった。「いつもの吉野家の玉ねぎであり牛肉」としか思えなかったあたり、やはりまだ修行が圧倒的に足りないようだ。
・期間限定の「裏牛丼」
ところで、先に述べた「吉野家で働く人が実践している食べ方」は、吉野家が従業員3000人以上を対象に「まかない牛丼の食べ方、食べ順、こだわり」について自由回答で募ったところ集まったもの。
それらの結果を参考に、吉野家では “裏牛丼” なるものが期間限定で発売されている(一部店舗をのぞく)。“裏牛丼” は全部で4種類あり、どれもがプロの実践アレンジと言っていいだろう。
それぞれの詳細は以下に記載しているので、興味のある方はご参考に。なお、吉野家が紹介している「商品構成」「食べ方」「特徴」も役立つだろうから、併せて抜粋しておこう。
■肉だく胡麻ドレ牛丼(税抜519円)
商品構成:牛丼並盛+肉だく、胡麻ドレッシング
食べ方:牛丼に肉だくをのせて胡麻ドレッシングを回しかけ、牛肉と胡麻ドレッシングをよく混ぜてお召し上がり下さい。
特徴:胡麻ドレッシングの酸味と甘味が肉のうまさに奥深さを添え、まろやかで奥深い優しい味わいの牛丼となります。
■おしんこ月見つゆぬき牛丼(税抜519円)
商品構成:牛丼並盛+お新香、玉子
食べ方:牛丼の上にお新香とセパレーターで取り出した黄身をのせ、さらに七味をたっぷり振りかけてお召し上がり下さい。
特徴:吉野家現社長・河村お薦めの食べ方。牛丼とトッピングした食材の温度差、食感の違いが絶妙です。
■ネバとろ牛丼(税抜598円)
商品構成:牛丼並盛+納豆、オクラ、とろろ、玉子
食べ方:ネバネバ感が出るまで、よく混ぜてからお召し上がり下さい。
特徴:スタミナ満点のネバネバ食材を中心にトッピングしました。さらっと食べたい時、スタミナをつけたい時、最適な商品です。
■アボチー牛丼(税抜598円)
商品構成:牛丼並盛+アボガド、チーズ
食べ方:牛肉、アボガド、チーズの3つが一緒になるようバランス良く お召し上がり下さい。チーズをよく溶かしたい方は、牛肉の下 にチーズを移動して下さい。
特徴:牛肉と相性抜群の野菜とトッピングを組み合わせました。独特のコクと風味をお楽しみください。
──余談だが、上の「おしんこ月見つゆぬき牛丼」は以前に本サイトで紹介した社長テクだ。私は何度も試したことがあるだけに、「マジで美味い」と確信を持って言える。それから、私が今日食べた「ネバとろ牛丼」も実に良かった。残りの2つはまだ試していないが、かなり期待できる予感がする。
ただし……! 裏牛丼は2020年10月4日20時まで。期間が1カ月もないのだ。割と短いから、「気付いたら終わってた」となる人が一定数出ると思われる。お気をつけて!