【インタビュー】ドムドムハンバーガー社長に聞いた今後の事業戦略「お店に来て頂いたお客様の1番に」 / 37歳で初就職したスゴイ社長

私(佐藤)が人生で初めて食べたハンバーガーは「ドムドムハンバーガー」の商品だったと思う。それがどんな味だったのかは思い出せないが、子どもの頃に身近にあったファストフードはドムドムだった。

ドムドムブランドは今年創業50周年を迎えている。日本初のハンバーガーチェーンでありながら、その50年間は苦難の連続だったかもしれない。2017年の事業譲渡以降、現在再起の道を歩むドムドムは、これからどうなっていくのか? 株式会社ドムドムフードサービス社長に話を聞いた

・浅草花やしきに新店オープン

2020年9月19日、東京・浅草の遊園地「花やしき」にドムドムの新店舗がオープンした。それに先立って行われた17日のプレオープンでは、想定を上回る来客があり、販売予定だった商品はすべて完売したそうだ。

ドムドムは、ダイエー傘下の「株式会社オレンジフードコート」の事業のひとつとして長らく店舗運営を行っていた。2017年5月、レンブラントホールディングスの子会社「レンブラント・インベストメント」と「新生企業投資」がドムドムハンバーガー事業を譲受し、株式会社ドムドムフードサービスの設立と共に、新しい道を歩むに至った。

その当時全国に47店舗存在したのだが、不採算店や自社内で競合する店舗を精算し、現在は27に店舗数を縮小している。都内では、5月31日の赤羽の店舗が閉店して浅草花やしき店がオープンするまで、23区内では練馬・大泉学園店のみとなっていた。

それだけに、花やしき店のオープンを心待ちにしていたファンも多いだろう。プレオープンに客が殺到したのもうなづける。それだけドムドムを愛する人が多い証だ。

・ブランドへの愛着

ブランドを引き継ぐに当たって、不安や戸惑いはなかったのだろうか? 譲受後に代表取締役に就任した藤﨑忍社長は次のように話す。

記者「引き継がれる当初、かなり厳しい状態だったと思いますけど、プレッシャーはありませんでしたか?」

藤﨑社長「プレッシャーよりも、ドムドムは多くの人に愛されているブランドだとわかっていたので、むしろ引き継ぐ “機会” をもらったと感じましたね。やはり日本初のハンバーガーチェーンですから、愛着をもって利用されている方は多くいらっしゃいます。その期待に応えたいと思って、再建に臨みましたね」

社長は再建開始当初、商品開発としてレンブラント・インベストメントに入社。その後、スーパーバイザーや店長職を経て、2018年に社長に就任している。現在もお店に立つことがあるというから驚きだ。

少し話はそれるが、社長は非常に変わった経歴を持っている。37歳まで専業主婦、初めて就職したのは渋谷の109、そこで販売や仕入れのノウハウを身に着けて、後に居酒屋を開業。実家の事業も引き継いで2店舗を経営するに至る。2017年11月にレンブラントの事業再生チームに参加して「手作り厚焼きたまごバーガー」などを開発し、ドムドム再建に大きく貢献している。現在は社長職に就くかたわら、店舗でも働く、型破りな人物だ。

・従業員のために生まれたオリジナルマスク

そんな社長だからこそ、アパレルブランドとのコラボレーションや、オリジナルマスクのネット通販。グループホテル「レンブラントスタイル札幌」の1室をまるまるドムドム仕様にしたりなど、奇抜なアイディアが生まれるのではないだろうか。

藤﨑社長「私たちのモットーはお客様の笑顔のために、美味しいこと・楽しいことにチャレンジすることだと思ってます。美味しいことは基本で最低限の価値です。今、どこに行って何を食べても美味しいのが普通ですから、それにプラスして特徴を持たせることが大事だと考えてます。とにかく楽しんで頂いて、笑顔になって欲しいと思っています」

記者「オリジナルマスクも笑顔の一環ですか?」

藤﨑社長「マスクは本来、現場に立つ従業員のみんなを守ることを考えて始めたんです。マスク不足の時期がありましたよね? その時に自社開発を提案して、それで試作を重ねて私も試着を繰り返して今の形になりました。おかげ様で、購入した方からも好評を頂いているので、うれしく思ってます。これもある意味でお客様の笑顔のお役に立っているかもしれませんね」

・コロナでLINE活用

店舗が少ないながらも、ネット上では何かと話題になるドムドム。ブランドイメージは着実に向上している印象はあるが、このコロナ禍で飲食業界は厳しい状況にある。

記者「コロナの影響で1番お困りになることは?」

藤﨑社長「スタッフとのコミュニケーションでしょうかねえ。行ける時はいつでもお店に行くんですけど、一時期はあちこち出かけることができなかったので、LINEのグループでアルバイトの皆さんとやり取りしてましたよ。このお店(浅草花やしき店)ができる時も、2018年2月の姫路店以来の新店でしたから、「皆さんのおかげで新しいお店を出せるようになりました」とお礼を伝えました」

記者「なるほど、意外ですね。客足の影響をお考えかと思いました」

藤﨑社長「お客様を迎えるにも、働く従業員のみんながいなければできないことですよね。コミュニケーションを大切にしたいですね。どんな時でも」

・来年も都市型店舗を

今後はさらにお店を増やす計画なのだろうか? これからの展望についても尋ねた。

記者「店舗を増やすお考えはありますか?」

藤﨑社長「来年にも都市型店舗を設ける考えはあります」

記者「では、今後はバンバン店を出される予定ですか?」

藤﨑社長「いえ、店舗数で競うようなことは考えていません。それよりも、その土地その土地にあったお店を作って行きたいと思っています。ここ花やしきのお店は、店構えを見て頂くとわかるように和風の造りにしています。浅草の街に合うようなお店にしました。今後作るお店も、利用して頂けるお客様の1番になれるようなものにして行きたいと思っています。店舗数で1番ではなく、来て頂ける方の1番になるようなお店を増やして行きます」

・帰ってきたドムドム!

この日、取材を共にした当編集部の中澤星児は、前日にドムドムに行くのが楽しみすぎて、寝付けなかったそうだ。その気持ちがちょっとだけわかる。私の人生初のハンバーガーショップ、ドムドムハンバーガーは幼心に刻まれた特別なお店だ。

次第に店舗がなくなっていくなかで、その特別な思いだけが残って大人になった。1度は衰退して手の届かなくなってしまったドムドムが、元気になって帰ってくるその様子は理屈抜きでうれしい。

かりんとう饅頭や厚焼きたまごバーガー、丸ごと!! カニバーガーなど、個性があふれ出してしまっているけど、それもまたドムドムらしさだと思う。これからもそのまま行って欲しい。ゆっくりでもお店が増えることを、心から願っている。

取材協力:ドムドムハンバーガー
Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24

カテゴリー ドムドム, ドムドムハンバーガー, 国内, 浅草花やしき

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