いまTwitterで、とあるスーパーが話題だ。筆者の知る範囲では2020年8月半ばに一度話題になり、9月30日からまたリバイバルヒット中。そのスーパーとは、埼玉県にある「いなげや 新座野寺店」だ。バズる理由はその構造。Googleマップで見ると、隣にある畑がメチャクチャ食い込んでいるように見えるのだ。
この調子だと、きっと今後はネタツイート系のアカウントによって使いまわされる定番ネタの仲間入りをすることだろう。Twitterではいなげやが土地の買収に失敗とか、地上げ屋と畑の持ち主の間で抗争があったとか、色々ささやかれている。事の真相は何なのか、当事者に聞いて分かった範囲でお伝えしよう。
・中からはわからない
Twitterでは実際に店舗を利用したことのある近隣住民と思われる人たちも驚きの反応を示している。どうやら、普段利用していても全く気付かなかったようなのだ。一体どういうことなのか? こんな形をしていたら普通に違和感がありそうなものだが……ということで実際に筆者も店舗を訪れてみると、マジで店内からは違和感ゼロ。
建物内のレイアウトが、とても上手くなされているのだ。まず、畑によって微妙にデッドスペースとなっていそうな雰囲気のある小さい台形的な空間には、クリーニング屋と花屋が入居している。そう、この微妙すぎるスペースは、いなげや店内から壁で仕切られているのだ。
クリーニング屋の隣は いなげやのイートインスペースになっており、筆者が訪れた時点では畑側の壁沿いにドリンクなどのコーナーが並んでいる感じ。おそらく誰が入っても、特に違和感は感じないのではなかろうか。そして店内スペースは衛星写真で見るほど広く無い。駐車場側から見て奥の方は、在庫保管用などのバックヤードや調理場などになっていると思われる。
・買収に失敗?
店内の様子や敷地の使用状況はなんとなくお分かりいただけたかと思うが、気になるのはTwitterでささやかれている噂の真相だ。はたしていなげやが土地の買収に失敗したのだろうか? ドラマなどであるような、地上げ屋の襲撃を受けた過去があるのだろうか?
日本食糧新聞によると、この「いなげや 新座野寺店」がオープンしたのは2005年3月19日。今から15年以上も前のことだ。恐らくオープン前の土地の買収事情について知る店員も、店舗には勤めていないだろうし、仮に覚えていても外部に教えてくれる気がしない。
どうしたものかと思っていると、問題の畑の中で作業をする人を発見。
声をかけてみると、この人物は畑を所有するおじいさんだった。さっそく、真横のいなげやについて詳しく聞きたいということを伝える筆者。もし何らかのトラブルがあったら、気を悪くさせてしまうかもしれない。内心ヒヤヒヤしていたが、めちゃくちゃ快く語ってくれた。
まず、今のいなげやの土地が元々おじいさんの物だったのかについてだが、完全にNOだった。おじいさんによると、現在のいなげやの土地は、おじいさんがまだ若かったころに隣で田んぼをやっていた農家のものだったそうだ。
しばらくして近くを流れる黒目川の上流に団地ができ、川の水質がいちじるしく悪化。水が肌に触れると炎症を起こすレベルだったとか。川から水をひいていた一帯の田んぼもダメージを受け、おじいさんも手足の皮膚をやられてしまったという。
具体的に西暦何年のことか聞いたが、よく覚えていないそうだ。とにかく周囲に墓と田んぼと小学校しか無かった昭和の話らしい。ちなみに過去に黒目川の水質がヤバかったことについては、埼玉県のHPに水質調査に関する文献も残っており、おじいさんの話に矛盾は無い。
その後、次第に現在のように家が増え、隣の農家は土地を売ったのだという。そして田んぼだった場所にテニスコートができ、そのテニスコートが潰れたと思ったら、跡地に「いなげや 新座野寺店」ができたのだとか。
ということで、ネットで話題の畑が食い込みまくっている「いなげや 新座野寺店」。少なくともその畑の持ち主であるおじいさんの話を参考にする限りでは、いなげやが土地の買収に失敗したとか、地上げ屋とのドラマチックなバトルとか、そういうことは無さそうだった。現場からは以上です。
参照元:日本食糧新聞、都市河川の汚濁特性について(PDF)
Report:江川資具
Photo:RocketNews24.
ScreenShot:Google Map.