【目からウロコ】筆談でやり取りするバー『デカメロン』に行ったら、普段自分が人の話を聞いていないことを思い知った……

皆さんに質問です。会話中に人の話をちゃんと聞いてますか? そう尋ねた私(佐藤)自身の答えは、残念ながら「ノー」だ。正直ほとんど聞いていない気がする。自分がしゃべることばっかりで、相手の話に適当に相づちしている気が……。

自分がいかに人の話を聞いていないのか、よくわかる体験をしたので皆さんにも紹介したい。新宿歌舞伎町に誕生したカフェ & バー「デカメロン」では、筆談でのコミュニケーションを推奨している。実際に筆談を体験してみると、すぐにわかったぞ! しゃべって伝える時に、全然人の話を聞いていないってことが!!

・コミュニケーションは筆談で

日本最大規模の歓楽街の歌舞伎町は、東京都の新型コロナウイルス感染拡大スポットのひとつとして、一時名前が挙げられていた。その影響もあって、バーやスナックなどの接客を伴う飲食店は現在も厳しい経営状況が続いている。

この界隈で名前のよく知られたお店が次々と閉店していくなかで、ここデカメロンは2020年7月22日にオープンした。場所は歌舞伎町のランドマーク「ゴジラヘッド」のすぐそば、美味しい白レバーを食べられるお店として有名だった焼き鳥屋の跡地だ。

お店はごく普通の立ち飲みバーだ。入口には大きな電球が吊り下げられていて、奥には小さな厨房がある。チャージ代500円で飲み物は一律1000円。明朗会計の良心的なバーである。

・飛沫防止ともうひとつ

筆談を推奨している理由は2つある。ひとつは「“密” なバーでの会話による飛沫拡散を防ぐため」。そしてもうひとつは、「コミュニケーションをもう1度考え直すきっかけにしたい」とのこと。それは一体どういうことだろうか? 実際に体験すると理由がわかるかもしれない。

早速、店長キヨさんと筆談で会話させて頂くことにした。通常は1冊のノートを共有して、それぞれの言葉をつづるそうだ。今回はそれぞれ1冊ずつノートを用意して、言葉を交わすことになった。

・実際に筆談してみた

筆談が始まると、店内には冷蔵庫の低い電気ノイズと、2人が鉛筆で字を書く音しか聞こえなくなった。

佐藤 「突然(取材に)お邪魔してすみません」

キヨ 「お酒召し上がりますか? メニューは背面に」

佐藤 「じゃあ、ジンありますか?」

そう書いたノートを見せると、キヨさんは何かを書きかけた手を止めて厨房の方へと向かった。そして戻ってくると、次のように記した。

キヨ 「最近書いた記事はなんですか? ジンは仕込みで…… ないです…」

佐藤 「あらら…、じゃあアイスコーヒーを下さい 記事はデカイ肉の記事を書きました」

・より深く相手と向き合える

たったこれだけの言葉をやり取りするのに10~15分かかった。書くのに時間がかかるからだ。自分が書き、その内容を見た相手が返事を書く。お互いが書き終わるのを、その都度待たないといけない。交わす言葉の数は、会話よりもずっと少ない。それなのに、すごく深く相手と向き合っている気がしてくるから不思議だ。会話の数以上に、相手に向き合っている気がしてくる

しかも鉛筆で書いているから芯が短くなってきて、そのたびに鉛筆削りを使わないといけないのだ。その「間」がまた良い。言葉を交わし合う速度はすごくゆっくり、会話の半分以下だ。とてもゆっくり相手と向き合う。どうやらそれが筆談らしい。

・会話のようにはいかない

それにしても手間がかかる。なのになぜ筆談を始めることにしたのか? 筆談を終えた後、店の外で(会話で)尋ねると、キヨさんはこう説明してくれた。

「もちろん新型コロナウイルス対策もあります。うちのような小さなバーでは、どうしても密になってしまうので、筆談はちょうどよかった。それだけじゃなくて、こんな世の中になってしまったので、筆談によるコミュニケーションが新しい関係性を構築するのに役立つんじゃないかって思ったんですよね

筆談をやってみてわかってもらったと思うんですけど、会話以上に相手と向き合う必要があるんですよ。会話だと適当に相づち打ってれば成り立つところがありますよね。相手の話なんか全然聞いてないのに、聞いてるフリができるんですよ。書くとそういう訳にはいかないじゃないですか。それから言葉遣いがとても丁寧になる。乱暴な言葉遣いって、書きにくいんですよね。会話ならすぐ出てくるのに。それも面白いところです」

・関わり方を見つめなおす

「with コロナ」と言われる時代だからこそ、人との関わり方を見つめなおす。そのきっかけに筆談を用いた訳だ。働き方や暮らし方が見直され、コミュニケーションもまた新しい変化を求められている今、ここデカメロンには “古くて新しい” 人との関わり方があった。会話やネットに疲れたら、ここで筆談してみるといいかもしれない。自分が、どう人と向き合おうとしているか、見えてくるはず。

・今回訪問した店舗の情報

店名 デカメロン
住所 東京都新宿区歌舞伎町1-12-4
時間 14:00~22:00(短縮営業中:2020年8月現在)
定休日 不定休

取材協力:デカメロン
Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24

カテゴリー バー, 国内, 新型コロナウイルス, 新宿, 歌舞伎町, 生活, 筆談

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