吉野家の常務取締役である伊東さんに「すき焼き(すき鍋)のお肉を卵にドンする派ですか?」と聞いたのは、『黒毛和牛すき鍋』の試食会でのこと。商品とは直接関係のない質問ではあるが、答えてくれそうな空気を感じたので思い切ってぶつけてみたのだ。すると……
予想通り、伊東さんは教えてくれた。それも、かなり詳しく。なんなら、「肉をドンするかどうか」以外のことも教えてくれた。その食べ方は私にとって斬新なものだったが、試してみると「すき焼き」がまったく違う顔を見せてくれた気がした。早い話が、メチャクチャ美味かったのだ。
どんな食べ方なのかは、伊東さんの発言を引用する方が分かりやすいだろう。こんな感じである。
──ところで伊東さんって、すき焼き(すき鍋)のお肉を卵にドンする派ですか?
伊東さん「僕はね、まず卵をつけずにそのまま食べる。それから、卵に2〜3回くぐらせる。で、すき鍋を食べ終わった後にその卵をご飯にかけて、卵かけご飯にして食べる。これが僕の食べ方」
──そのTKGは間違いないヤツですね。
伊東さん「ただ、『黒毛和牛すき鍋』のときはやらない。普通のすき鍋(牛すき鍋)の方が卵かけご飯に合うからね。これで作る卵かけご飯が、めちゃくちゃ美味しい」
──なるほど、牛すき鍋の種類でTKGに行くかどうかを決めるわけですね。
伊東さん「あとね、すき鍋を食べているときに、まだ火がついている段階でチーズを入れてちょっと置くと、味がぐっと変わるんですよ。うまいんだよね、これが」
・チーズだと?
というわけでまとめると、TKG(卵かけご飯)とチーズ追加が食べ方の2本柱なのだが、私にとって意外だったのはチーズである。なんだ、その邪道的食べ方は? 和風のすき鍋にチーズなんか入れたら、味の方向性がかなり変わってしまうのではないか? 気になったので、実際にやってみたところ……
それは「すき焼き」と「チーズフォンデュ」の間に生まれたハーフの子供のようだった。チーズが表に出ながらも、割り下の風味はしっかり残っている。見事な調和だ。そのチーズがトロけたところに具材を絡めると、箸が止まらない。
味変としては革命的と言っていいだろう。黄色人種のイケメンが整形したら白人になったくらいの変わりよう。いかがわしいサプリの広告に載っているビフォーアフター写真のような変化が、この鉄鍋の中では現実に起こっている。
すでに試したことがある人だって多いだろうが、私のように「すき焼きにチーズだと?」となった人はぜひ一度試してみてくれ。コツと言うほどでもないが、鍋の火がギリついているタイミングで投入するのがポイントだぞ。