【長万部】子どもたちに愛されてきた玩具店が閉店へ / 人もいなくて子どももいなくなった

【長万部】子どもたちに愛されてきた玩具店が閉店へ / 人もいなくて子どももいなくなった

「もう閉めるんですよ。いまその整理中でね……。人形とか、欲しいって人に譲ろうとか思ってるんです」。そう語るのは北海道・長万部町の『むらた玩具店』のおばあちゃんだ。昔は、子どもたちのためのくじ引き(30円)やおもちゃ、文具などをたくさん置いていたが、閉店のために整理しているという。

確かに、店内にはガランとしていて玩具店のようには見えない。くじ引きがふたつと小さなおもちゃ、おちょこ、湯呑み、そして日本人形が置いてあるだけになっている。玩具店とは思えない組み合わせだが、おちょこや湯呑みは欲しい人がいればあげようと思っているのだとか。

昔は国鉄の人も町の人も多くてすごく賑わっていたが、どんどん人が減り、もう子どもたちがいないのだという。だからお店をやっていてもお客さんがこないのだとか。かつての国鉄・長万部駅はあらゆる列車が止まるメインステーションで、まさに長万部は鉄道で栄えた町だった。しかし1970年代には13000人いた住民も、現在は半分以下になっている。

くじ引きも、業者さんがどうしても置いてほしいというのでスーパボールやコインのくじ引きは置いてるとのこと。そう語るおばあちゃんだが、子どもたちのことが気がかりのようで、くじ目当てにやってくる子どもがくると嬉しいという。くじがないと寂しいとも語っていた。

閉める理由としておばあちゃんの年齢もあるだろうが、いくら歴史を刻んできた店が消えるとしても「閉めないでください」とは誰も言うことはできないだろう。子どもが来ない玩具店ほどさびしいものはない。筆者は長万部町の住民ではないが、ジワジワと確実に進行している危機を強く感じた。きっと、住民たちはもっとそれを感じているに違いない。

『むらた玩具店』は長万部駅前にあり、場所としては一等地にある。どんな店だって注目される立地である。その店が閉店せざるを得ないのだから、たとえ長万部の住民じゃなくてもこの状況が理解できるだろう。

余談だが、スーパーボールのくじを3つひいてみたところ、ひとつが大当たりで大きなスーパーボールをゲットできた。くじの数は110枚。おばあちゃんは2012年10月にも閉店するらしいので、それまでにすべてのくじが引かれるかどうか、とても気がかりである。

おばあちゃんが話す言葉一つひとつから、深い長万部の歴史を感じることができた。最後に、お話と撮影に応じてくれたおばあちゃんに心から感謝したい。そして、いつまでも長生きしてほしいものだ。
 
関連1: 長万部観光協会 公式ホームページ
関連2: 長万部役場 公式ホームページ
Correspondent: Kuzo


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