異性愛者の人にとっては、同性愛者として日々を生きることがどのようなものか、想像力を膨らませて考えてみても、なかなか実感をもって理解しにくいものだろう。
アメリカ人男性のTimothy Kurekさん(26歳)は同性愛者として生きることがどのようなものかを理解するために思い切った行動に出た。なんと1年間「同性愛者として生きる」ことにしたのである。彼のこの行動は彼の生活と周囲の人々に大きな変化を与えることになった。
実はKurekさんはアメリカでも特に保守的なクリスチャンの多い地域で、小さい頃からクリスチャンとしての教育を受けて育ってきた。通っていた教会では友人が同性愛者だとしたら 「あなたは神の嫌悪の対象だ。天国に行くためには悔い改めなければならない」と言うように教えられてきた彼。その教えを信じ、疑うことはなかったという。
そんな彼の信念を揺るがす出来事が起きたのは4年前のことだった。知り合いの女性が家族に同性愛者であることをカミングアウトしたところ、家族にその事実を受け入れてもらえず拒絶されたという話を聞いたのだ。その女性が悲嘆にくれて泣く姿を見て、心が揺さぶられたという。
この出来事がきっかけで「ゲイというラベルを貼られることが人生をどのように変えるのか、可能な限りの現実感を持って理解したいと思った」そうだ。1年間ゲイとして生きることを決意し、友人や家族を含めあらゆる人々に「カミングアウト」した。彼が計画的にこうした行動をとっていることを知っていたのは、彼のおばさんと一人の親友、そして彼氏として「採用」されたゲイの友人だけだった。
内側は異性愛者のクリスチャンとしてのアイデンティティを保ちながら、ゲイの人向けのカフェで仕事を得たり、ゲイバーに呑みに行ったり、ゲイのソフトボールリングに参加したり、とゲイのコミュニティに入っていたKurekさん。
しかし、厳しい現実にも直面した。カミングアウト以降、彼の友人の95パーセントが彼に話しかけなくなったのだ。さらに、カミングアウトに最も衝撃を受けたのは彼の母親だったそうだ。
Kurekさんによると「ある日、母さんの日記をちらっと覗いてしまったんだ。そしたら、母さんは “同性愛の息子を持つぐらいなら、医者に末期がんを宣告された方がましだ” と書いていたんだ」と話す。それほどのショックを受けていた彼の母親ではあったが、最終的には彼のセクシュアリティを受け入れ「非常に保守的なクリスチャンからゲイコミュニティの理解者へと変化した」とのことだ。
「僕が経験したことは同性愛者たちの一般的な経験と比べたら、全くたいしたことがないよ。ゲイであることを隠しながら生きることがどれだけつらいか、ほんの少しつかめただけにすぎない」と彼は謙虚に語る。
かつて同性愛者を嫌悪していた彼が、心の中で芽生えた疑問の答えを得るべく、友人を失うというリスクを冒してまでとった大胆な行動は世界中で反響を呼んでいる。
なお、彼は今回の経験を本としてまとめ、出版によって得た利益の一部をホームレスのゲイの若者たちを受け入れる施設に寄付する予定だそうだ。
(文=佐藤 ゆき)
参照元:The Huffington Post(英文)
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