青森県西部に位置する鰺ヶ沢町。普段は静かな浜辺に巨大なワニが現れた。といっても本物ではない。海岸の砂で作ったサンドアートのワニだ。
特別なイベントがあったわけではなく、アーティストのゲリラパフォーマンスでもなく(たぶん)、突如として姿を現した砂のワニ。これが海でよくやる砂遊び程度の作品であれば遊泳客のたわむれということになろうが、本職(?)としか思えない完成度。
数人の若者が作業していたという目撃談があるが詳細は不明で、いったい誰が何のために……と地元で話題になっている。
・鰺ヶ沢海水浴場
現場の様子を詳しくお伝えしよう。舞台は青森県西津軽郡の鰺ヶ沢海水浴場。日本海に面し、目の前いっぱいに水平線が広がるのどかな海水浴場だ。海開きは7月18日とまだ先で、普段は閑静な砂浜といえる。
が、よく見ると遠浅の浜辺に、なにやら砂を掘り起こしたような一角が。
近づくと2匹の巨大なワニが円を描いているのが見える。体長は少なくとも5mはあろうか。
ここ鰺ヶ沢海水浴場に最初の1匹が登場したのは今月3〜4日のこと。あまりの完成度に地域の人を驚かせ、地元メディアによると町で雨よけのシートをかぶせて形が崩れないようにしていたとか。現在はシートは取り払われ、1匹目は少し乾燥して崩れているところも見える。
ところが9日、さらに大きなワニが出現! こちらはまだしっとりした “できたて” の感じが残り、なめらかな表面を見せている。身体の大きさの違いから、夫婦のようにも見える。同じ作者の作品かどうかは不明……だが、この統一感はきっと同一人物だろう。
中央にはコロンとした卵があり、2匹は卵を守っているのかも。地元では卵がかえる、つまり3匹目が加えられるのでは、と期待されているという。
どちらも、とても素人とは思えない完成度。指先や、背中のゴツゴツも丁寧に再現されている。粘土遊びでもよくわかるが、頭に形を思い描くことと、それを立体にすることには大きな差がある。作者は美大生? 工芸家? 原型師?
地域では歓迎ムードで、園児が見学に来たり、犬の散歩中に足を止める人も。現場は誰でも入れる公共の海水浴場で、複数メディアが報じたにもかかわらず、いたずらなどの被害もなく作品が残っている治安の良さにも驚き。
・これからどうなる?
目的は明らかになっていないが、作者のユーモアや遊び心が感じられるのは確か。SNSで話題になると見物客の渋滞など二次的な問題を引き起こすこともあるが、風雨で跡形もなく自然に帰る作品であることも秀逸。温かく見守る地元の雰囲気も微笑ましい。
折しも先週末は強い雨雲が東北地方にまで北上。取材は降雨前に行ったが、2匹のワニも前週までのような形を留めていない可能性が高い。修復される、あるいは新しく作品が追加されることは果たしてあるのか。
夏の訪れが遅く、まだ肌寒い日もある東北地方だが、浜辺ににぎやかな声が戻ってくる季節ももうすぐだ。厳しい社会情勢の最中、ひととき人々を笑顔にしたほっこりニュース。以上、現場からお届けしました。
参考リンク:青森 NEWS WEB、読売新聞オンライン
Report:冨樫さや
Photo:RocketNews24.