不気味な謎の漬物『魔界のオリーブ』を味わってみた / そして「魔界」の意味を思い知った

先日、何とはなしにネットを眺めていたところ、とんでもなく不気味な名前の食べ物を発見してしまった。衝撃的だったので読者の方々と共有したい。福島県にある漬物屋「香(こう)の蔵」から2020年6月17日に新発売されたその食べ物の名は、「魔界のオリーブ」という。

「オリーブ」はわかるが、「魔界」とは何なのか。危うさがすごい。口に含んだ瞬間、全身から紫色の液体を吹き出しながら卒倒しそうである。しかしそんな食べ物が平気で売られているはずもない。正体を確かめるべく、実物を入手してみることにした。

レビューの前に少し補足しておくと、「魔界のオリーブ」には醤油、白だし、トマトの3種類の味がある(各756円)。今回は醤油とトマトを選び、公式オンラインショップで購入した。

数日後、無事に商品が到着。これを運んできた配達員の方も、まさか自分が「魔界のオリーブ」を運んでいるとは思いもしなかっただろう。

実物の外箱には、オシャレなデザインで「魔界のオリーブ」の文字が確かに刻まれていた。オシャレに書かれても危うさは隠せていない。

ともあれ、まずは醤油味の方から神妙に開封していく。

箱の中には、袋に詰まったオリーブ。ボリュームは1袋に20個程度といったところか。

加えて袋だけではなく、商品に関する説明の載ったカードも入っていた。その最初の一文をここに抜粋しよう。

魔界のオリーブの世界へ、ようこそお越しくださいました

およそ漬物屋が書く文章ではない。一体どういうことなのか。激しく動揺を誘う文言だが、続きを読むことで「魔界」の意味するところがわかる。一口食べると魔界に引き込まれるように止まらなくなる──そんなやみつきになる逸品らしい。

よくよく考えたらやっぱりわからなくなってきたが、要は中毒性が高いということなのだろう。漬物屋がここまで魔界アピールしてくるのは余程のことだと思うので、実食するしかない。

こちらの方も妙なテンションになりながら、袋の中身を皿に取り出す。漬け液に浸って茶色に染まったオリーブの実を、期待と緊張に包まれつつ齧(かじ)った。

そうして噛み締めた途端、「おお、これは」と、軽快に舌鼓を打ってしまうような美味しさが弾けた。オリーブの内に閉じ込められた醤油と黒糖の旨味がジュワッと染み出て、口の中にみるみる広がっていく。

甘さと塩辛さの塩梅が丁度良く、そこへ山椒の香りもほのかに入り混じり、奥深く芳醇な味わいに仕上がっている。新しい。今までに食べたことのない漬物だ。それも「洋」ではなく「和」の漬物である。

特選醤油と黒糖が織りなす黒たまり漬けの味付けによって、ご飯のお供としてのポテンシャルさえ備わっている。オリーブ果実ならではのクセはあるものの、確かに味覚に刺さる丁寧な仕事ぶりだ。

がぜん、心の針が期待の方に振れる中、今度はトマト味のオリーブの方も味わってみる。

こちらは打って変わって「洋」の漬物だ。しかしもちろんのっぺりとした「洋」の味ではなく、爽快なトマトペーストの酸味と、それを下から突き上げるニンニクと黒コショウの風味が火薬のように仕込まれていて、精妙に炸裂してくる。

元からトマトとオリーブの相性は抜群だが、漬物ナイズされることで何倍にも増幅されているように感じる。風味付けの効果も大きい。つまるところ逸品だ。お酒のつまみとしてだけではなく、普段の食卓のおかずとしても、紅い華を添えてくれることだろう。

同じオリーブでありながら、ここまで対極のバリエーションを披露してくるとは驚きだ。それでいて両方に共通しているのが、とにかく後を引く点である。一口食べたあとで他のおかずに浮気しても、回りまわってこのオリーブに舞い戻ってしまうような、そんな魅力がある。

広大かつ迷宮。なるほど、作り手側のおっしゃる通り、一度引き込まれると容易には抜け出せない。実に、とても危険だ。

読者の方々の目にはどう映っただろうか。もし少しでも心惹かれたなら、この言葉を送りたい。魔界のオリーブの世界へ、ようこそ。

参照元:「みそ漬処 香の蔵」オンラインショップ
Report:西本大紀
Photo:Rocketnews24.

カテゴリー オリーブ, グルメ, トマト, 国内, 漬物, 生活, 醤油

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