2012年8月2日に発売されたWii専用オンラインゲーム『ドラゴンクエストX』(スクウェア・エニックス)。有料課金のゲームなので、最初の20日間は無料だが、それ以降は毎月サービス利用料を支払う必要がある。
オンラインになったことに対して多くの人たちから批判を受けている今作だが、ゲームとしておもしろいものであればオンラインだろうとオフラインだろうと問題ないはず。オンラインということで偏見を持って文句を言っている人が多くいるなか、「ゲームとしておもしろいかどうか」だけに焦点を当ててレビューしてみたいと思う。
・最初はオンラインじゃない
長時間を要するUSBメモリーの初期化と、長時間を要するゲームの長いインストールが終わると、いよいよゲームがはじまる。最初はオフラインでゲームが開始されるため、ちょっとガッカリ。
・あまりにも寂しい描写に挫折しそうになる
ゲームが開始されると、プレイステーション2の初期のポリゴンRPGのような描写にゲンナリする。このグラフィックで萎えてしまい、ゲームに対するテンションが下がってしまう人もいるのではないだろうか? ゲームの楽しさはゲーム性にあることは認めるが、それを演出するグラフィックがここまでショボいと気持ちが下がってしまう。
ましてや、私たちはあらゆる最新ゲームでリアルな描写になれてしまっており、このグラフィックにショックを受けるのは仕方がないことである。『ドラゴンクエストX』に対する期待度もあるから、そのゲンナリ度はなおさら強くなる。
・戦闘にドラクエらしさがあって楽しくなってくる
「このままのクオリティでゲームが続くのか」と萎えていたものの、村から外に出てスライムと戦ってテンションが一気に上がった。ようやく「ドラクエらしさ」が感じられるシーンになったからだ。開発者もちゃんと「ドラクエらしさ」を考えているようで、オンラインRPG特有の戦闘システムではあるものの、演出が従来のドラクエを感じられるものになっている。
戦闘に突入したときの演出、コマンドの演出、ちゃんとドラクエになっている。戦闘シーンになってようやく「あ、なるるほど。これは続けてもいいかもしれない」と感じた人は多いと思われる。戦闘は何度も何度も繰り返すゲームの肝だ。それゆえ、その戦闘がおもしろい『ドラゴンクエストX』はある意味「ちょっとだけ成功した」と言ってもいいかもしれない。
・オンラインになってまた挫折しそうになる
オフラインでのイベントをクリアすると、いよいよオンラインの世界へと導かれる。つまり、日本全国の人たちが待ち受ける世界に入るわけだ。だが、ここでもまた挫折を味わう。あまりにも動きがカクカクしすぎてて、ゲームプレイに支障が出るくらいヒドイときもあるのだ。人が多いとカクカクしてしまうようだ。正直、心が折れる。
まるでスペックの低いパソコンで遊んでいるオンラインRPGのようである。「ゲームは映像よりゲーム性! ゲームは映像よりゲーム性! ゲームは映像よりゲーム性!」と念仏のような唱えながらカクカクを乗り越え、村の外に出てみると……。
・他人が戦っているのを見ていると楽しくなってくる
そこには、無数のスライムと多くのオンラインプレイヤーの姿があった。カクカクで挫折しそうになった気持ちが、その風景を見ただけでスゥーッと解消。ドラクエの戦闘を日本全国のオンラインプレイヤーたちと一緒に楽しむことができる場。それが目の前に広がっているのである。
パーティーを組んで戦闘に参加することもできるし、横から応援して戦っている他のプレイヤーたちのテンションをあげることもできる。こんな賑やかなドラクエ、いままであっただろうか? 見ているだけで楽しいとはまさにこのこと。
・結論: 挫折ポイントを乗り越えれば楽しくなる
いくつかあるゲーム開始時の挫折ポイントを乗り越えれば、多くのドラクエファンは「オンライン化したドラクエの世界」にドップリとハマることができるはず。オンラインになってもドラクエはドラクエ。そこにドラクエとしての楽しさや雰囲気があるのは確かである。また、やっているクエストも従来のオンラインゲームの「お使い」とかわりないのがチョット不満(オンラインゲーム初心者からすると、むしろちょうどいいゲームだと思うので、あくまでゲーマー視点の感想)。
・挫折を乗り越えるフロー
グラフィックで萎える ← 挫折しないで乗り越えろ!
↓
戦闘のドラクエらしさで楽しくなる
↓
カクカクで萎える ← 挫折しないで乗り越えろ!
↓
他人とのオンライン戦闘で楽しくなる
・今後の課題
ただし、まだまだ足りないと感じる部分があるのも確かだ。映像面のクオリティに関してはWiiU版で改善されるので心配していないが、「ドラクエらしさ」だけでプレイヤーを楽しませている流れに不安を感じるのは私だけだろうか。
このままでも安定した楽しさを提供し続けることは可能だろうが、「ドラクエらしさ」だけでなく「新しい何か」という部分でプレイヤーを楽しませて欲しいのだ。「ドラクエの雰囲気を残したオンラインゲーム」ではなく、「ドラクエの雰囲気を残した新しい感動のあるオンラインゲーム」になって欲しいのである。
・雑感
筆者はオンラインゲームの『ファイナルファンタジーXI』をベータテスト時代からプレイしていたが、『ドラゴンクエストX』から『ファイナルファンタジーXI』と同じような空気を感じた。システムが似ているからかもしれないが、オンラインゲーム初心者は『ファイナルファンタジーXI』でも難しいと感じてしまうものなので、よりシステムが簡素化された『ドラゴンクエストX』のほうが遊びやすいといえるかもしれない。
プレイキャラ: クンタキンテ / エルフ女 / 武道家
Correspondent: Kuzo
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オリジナル記事: 【ドラクエX体験レビュー】挫折ポイントさえ乗り越えれば「ハマるゲーム」になる / 課題は「新しい何か」という部分でプレイヤーを楽しませること
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